"病室を愛人に譲れと言った医師の夫" 第2話
差額ベッド代は万千円。保険は効かない。 全額、私が自分名義のクレジットカードで支払う契約にサインした。
労働省のルールで、差額ベッドの利用は患者本の自由な同に基づく文が必だ。 いくら夫が隣の業医であろうと、院の病管理にをす権限はない。 病院側に「に個を回せ」とゴリ押しできなかったから、私に「自分から部に移ると申しろ」としに来たのだ。
あまりの浅ましさに、胃の奥から酸っぱいものが込みげてきた。
夫は眉をひそめ、さらに畳みかけてくる。
「母さんの言う通りだ。だいたい、おは昔から領が悪すぎる。俺のクリニックがここまで軌に乗ったのも、俺の腕と脈のおかげだ。おはただ、で適当に通訳の真似事をして遣い稼ぎをしていただけだろう? 医者の夫に養われてる自覚があるなら、俺が切にしているを優先するくらいの配慮を見せろ」
適当に通訳の真似事。 遣い稼ぎ。
喉の奥が、りで焼けるようにくなった。
、夫が学病院の勤務医だった頃、と激務に喘いでいた夫を経済にも精神にも支えていたのは誰だったか。 に夫が業を決したとき、医療法設の類をえ、資繰りの計画をと詰め、何よりクリニックの板となった「国富裕層向けメディカルスキンケア」
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の導線をゼロから構築したのは誰だったか。
私は学卒業、医療専の通訳・翻訳コーディネーターとしてキャリアを積んできた。 業、国患者の受け入れマニュアルを英語と国語で作成し、インフォームド・コンセント(説と同)の厳格な式をえ、トラブルを防ぐための通訳体制を敷いた。 現、私の会社はの正社員と数の登録通訳者を抱え、複数の総病院やクリニックと正規の業務委託契約を結んでいる。
夫のクリニックも、その契約先のつに過ぎない。 夫は自力で成功した気でいるが、クリニックの売の割を占める国自由診療部は、私の会社が裏でオペレーションを完璧に回しているからこそ成しているのだ。
それなのに、夫は対にいつもこう言っていた。 「妻ですか? まあ、自宅でちょっと英語の内職を伝ってくれてる程度ですよ」
義母もそれに同調し、法事のたびに親戚ので私を貶めた。 「男ができな仕事をしているのに、女がちょこまか端を稼いだ気になって恥ずかしい。そんなことよりく跡取りを産みなさいよ」
度の流産。 掻爬術のあとの、たい病のベッド。 夫は度として仕事を休んで付き添ってくれたことはなかった。 「仕事が忙しいんだ」「俺は医者だぞ、患者を待たせられない」
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そのくせ、織という若い受付と倫関係に落ち、彼女が妊娠したと分かった途端、夫は狂ったように浮かれ始めた。 クリニックの経費で級を買い与え、駅のタワーマンションを契約し、母親である義母まで抱き込んで「しい族」を演じ始めたのだ。
すべてっていた。 っていて、私はこれまで耐えてきた。 いま騒ぎててストレスを抱えれば、お腹ので必にしがみついているこのさな命を、また失ってしまうかもしれないから。 この子を無事にこの世に送りすこと。 それだけを唯の祈りにして、夫の裏切りにも、義母の嫌にも、ただ静かに目を伏せてきた。
でも。
お腹のの胎児が、ポコ、とさくいた。 まるで、「お母さん、もういいよ」と私に伝えてくれたかのように。
え切った病の空気ので、私はゆっくりと息を吸い込んだ。
「……嫌です」
静かな、けれどはっきりとした声だった。
夫の眉がねがった。 「何?」
「断ります。この部は私が契約し、私が差額ベッド代を払っています。私は歩もきません」
義母がヒッとく息を呑み、信じられないものを見るような目で私を睨みつけた。 「真由美さん、あなた、夫に向かって何ての利き方をするの!?」
「事実を申しげているだけです。ここは病院です。医療の判断で、静が必だからこの個に入っています。
なぜ私が、夫の倫相のために、自分の健康と子どもの命を危険に晒してまで部を譲らなければならないのですか?」