"泥棒猫と呼ばれた令嬢の即日破談" 第10話
ボーナスを借りするか、親に頼るしかない額だった。
だが、その親――雅代もまた、完全に破滅していた。
智也が青ざめた顔で実に駆け込むと、そこには別のようにさく丸まり、憔悴しきった雅代の姿があった。 居のテーブルのには、複数の級ブランドからの「会員資格失効通」が並んでいた。座のブティックだけでなく、塚グループが資本提携している百貨の商部からも、事実の取引止通告が届いていたのだ。
「智也……どうしよう……私、もう座のあのおにも入れないのよ……。所のお友達に、『今度の作の受注会、緒にきましょう』って誘われてるのに……入れないなんて言ったら、私のが……!」
雅代は涙でぐしゃぐしゃになった顔で、息子のの袖を掴んだ。 だが、智也の目には、そんな母親の姿がただただ醜悪で、憎悪の対象としか映らなかった。
「まだそんなこと言ってんのかよ!!」
智也は母親のを激しく振り払った。雅代がに倒れ込み、呆然と息子を見げる。
「!? 見栄!? 全部あんたのそのらない見栄のせいで、俺のはメチャクチャになったんだぞ! 見ろよこれ! 百万だ! 式のキャンセル料! 指輪の残もわせたら百万以だ! どうやって払うんだよ! あんたが払えよ! あんたが余計なを挟んだせいだろ!!」
広告
「そ、そんなお、うちにあるわけないじゃないの! お父さんの遺産だって、あなたの学の学費や私のの回りのものでほとんど使い果たしたのよ!?」
「じゃあどうすんだよ!!」
狭い実のリビングに、親子の醜い罵声が霊した。 かつて「自の息子」と「誇らしい母」として取り繕っていた関係は、と保ので無残にも崩壊していた。
翌週、佐伯弁護士の事務所の会議に、智也と雅代の姿があった。
なウォールナットのテーブルを挟んで座る佐伯弁護士は、非の打ち所のない紳士な態度でを迎えたが、その線は凍りつくように徹だった。芹の姿はそこにはなかった。最初から、直接顔をわせる価値すらないと判断されていたのだ。
「さ、佐伯先……どうか、芹さんに度だけでも会わせていただけないでしょうか」
智也は擦り切れたスーツの膝を握りしめ、必の形相で懇願した。無精髭が伸び、目のには濃い隈が張り付いている。
「俺が悪かったんです。母の無礼も、俺がもっとく止めるべきでした。芹さんのをらなかったとはいえ、俺が調子に乗っていたのは事実です。全部謝ります。座でも何でもしますから、どうかもう度やり直すチャンスを……!」
佐伯は静かに鏡を押しげると、元のファイルを閉じた。
「智也さん。
広告
本部は、あなた方に対して個な憎しみすら抱いておられませんよ」
「え……?」
「憎しみというのは、相に関があるからこそじるです。本部にとって、あなた方はすでに『完全に清算された過の過誤』に過ぎません。会う理由も、言葉を交わす必性も、微もしないのです」
佐伯の淡々とした言葉が、智也の自尊を容赦なく切り裂いた。 鳴られるよりも、罵倒されるよりも、その絶対な無関が番残酷だった。自分は彼女のにおいて、何の響力も持たないちっぽけな芥に過ぎなかったのだと、いらされたからだ。
「そ、それなら……せめて違約の減額を……!」
今度は雅代が、震える声でを乗りした。首元のパールはされ、化粧気のない顔は気に歳も老け込んで見えた。
「私どもには、そんなを括で支払う能力はございません……! 息子もまだ若く、これからのがあるのです。どうかご慈を……!」
佐伯はややかな目を雅代に向けた。
「ご慈、ですか。座の舗で本部に対し、『どこの馬の骨ともれない子』『親に持ちを捕まえて玉の輿に乗れと教わったのか』と言い放った際、お客様の胸に慈のはございましたか?」
「うっ……それは……」
雅代が言葉に詰まり、息を呑む。
「当に設置された監カメラの映像と音声は、すでに公証役にて確定付を取得し、証拠保全を完しております。
これ以、支払いを渋られるようであれば、即座に民事訴訟へと移いたします。