"泥棒猫と呼ばれた令嬢の即日破談" 第9話
芹の声音には、切の躊躇がなかった。
「彼女はの威を笠に着て、の程をれと私に言い放ちました。ならば、彼女自がどれほど無力で、自分が崇拝していたブランドから完全に拒絶されたであるかを、をもって学んでいただくのが番の教育でしょう」
「見事なご差配です、本部。直ちに配いたします」
佐伯は々と礼すると、淀みない取りで執務をにした。
残された芹は、窓のに広がる広な京の景を見ろした。 空はどこまでもく、澄み渡っている。 騙されていたことへの悔しさは微もない。むしろ、入籍するにあの親子の本性がのに晒された幸運に謝すべきだった。 自分のは、自分が切りく。誰かの見栄を満たすための具にされる筋いなど、初めからなかったのだ。
方その頃、都内の片隅にある賃貸マンションので、智也はを抱えて畳のにうずくまっていた。
部のは荒れ果てていた。脱ぎ捨てられたスーツ、み干されたビールの空き缶が散乱し、苦しい空気が澱んでいる。 智也の元にあるスマートフォンは、ここ数、絶えなく鳴り響いていた。だが、画面に表示されるのは芹からの連絡ではなく、式の担当者、ジュエリーショップの商、そして実の母親からの着信ばかりだった。
広告
「嘘だろ……なんでこんなことに……」
智也の爪が、畳をギリギリと引っ掻いた。 先ほどまで居酒で輩たちに自話をしていたの景がいされる。 「今度結婚する相の実、どうやら結構な資産らしいんだよね」「俺のスペックに惚れ込んじゃってさ、向こうの親も必だよ」などと、ありもしない言壮語を並べて、輩たちの羨望の差しを浴びていたのだ。
それが、たった本の話で獄へと叩き落とされた。
塚グループ。 本の流通・輸入業界の頂点に君臨する巨財閥。智也の勤める商社にとっても、塚グループとのパイプを持つことは願であり、もしその会令嬢を妻に迎えたとなれば、智也の社内での世は取締役クラスまで約束されたも同然だった。 智也は芹の品な佇まいや、どこか浮世れした育ちの良さから、「裕福な庭の娘だろう」とは察していた。だが、まさかその頂点に位置するだとはにもっていなかったのだ。
「母さんのバカが……! 余計なことばかりしやがって……!」
智也は母親への怨嗟の声を漏らした。 だが同に、自分自の胸の奥にある傲さにも気づいていた。 芹が自分の収を褒めてくれた、智也は優越に浸っていた。彼女が控えめにお礼を言うたび、「俺の方がのだ」と勘違いしていた。
広告
母親が芹に対して見すような態度を取っていたも、「まあ、嫁姑なんてそんなものだろ」「芹がすれば丸く収まる」とを括り、決して母親を諌めようとはしなかった。
その怠惰と傲のすべてが、今、ブーメランとなって自分に突き刺さっているのだ。
曜の朝、智也の自宅に通の封が届いた。 差は、「佐伯総法律事務所」。 をいた智也のが、激しくガタガタと震えした。
そこには、極めて然とした法な式で、背筋が凍るような現実が羅列されていた。
、婚約の破棄は、郎側親族(母・雅代氏)によるな侮辱為および名誉毀損に起因するものであり、責は全面に郎側にあること。 、結婚式の解約に伴う違約のうち、郎側負担分および損害賠償として、百万円を所定期までに支払うこと。 、オーダーメイド婚約指輪の残支払い義務は全額郎個に帰属し、当方は切の受領を拒否すること。 、今、塚芹氏およびその親族、関係者に対する直接の接触、話、磁記録による連絡の切を禁ずること。違反したは直ちに接禁止命令の申しておよび法措置へ移すること。
「百……万……!?」
智也のから、掠れた鳴が漏れた。 指輪の残を含めれば、瞬にして百万円以の負債が確定したことになる。
智也の貯など、や計の見栄の消費でほとんど残っていなかった。