"泥棒猫と呼ばれた令嬢の即日破談" 第7話
窓のを流れるビル群のガラス窓が、午のを浴びて煌めいている。 芹はくシートにを預け、さく息を吐きした。その表には、喪失やしみといった湿っぽいは微もなかった。あるのはただ、背負っていたい枷をようやく取りしたような、清々しい解放だけだった。
「本部、お疲れ様でございました。本社へ直いたしますか?」
席のドライバーが、ルームミラー越しに静かに尋ねてきた。、塚の送迎を担当してきた信頼のおけるベテラン運転だ。
「ええ、お願いします。それから……顧問弁護士の佐伯先に連絡を入れておいていただけますか。本社に着き次第、至急法務でお会いしたいとお伝えして」
「畏まりました」
ドライバーは得た様子でく答えると、静かにアクセルを踏み込んだ。
内が再び静寂に包まれる、芹は膝ので組んだ自分の指先を見つめていた。 智也との会いからの半が、馬灯のように脳裏をよぎる。
の事会で初めて会ったの智也は、それなりに清潔があり、当たりの良い好青を装っていた。商社に勤めていることを誇らしげに語り、将来のキャリアプランを自信満々に語る姿に、芹も最初は好を抱いていたのだ。
芹は物ついた頃から、「塚グループの継者」
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という圧のできてきた。づいてくる男たちのくは、芹本ではなく、背にある莫な資産やグループの権力を目当てにしていた。それが嫌でたまらなかった芹は、智也に対しては「輸入関係の商社でデスクワークをしている普通のOL」として接することを選んだのだ。肩きを剥ぎ取った自分というそのものをしてくれる相であってほしいという、ささやかな願いからだった。
しかし、関係がむにつれて、智也の本性がしずつ透けて見え始めた。 智也は事あるごとに自分の収を誇示し、芹がにつけている質だがロゴのないシンプルなを「質素でいけれど、もっと華やかなものをにつけたらどうだ」と品定めするように笑った。自分が奢ってやる事の席では、員に対して横柄な態度を取り、芹に対しても「女は男の歩ろを歩くべきだ」「俺のようなハイスペックな男と結婚できるんだから謝しろよ」といった言葉を、冗談めかしてにするようになった。
そして極め付けが、彼の母親である雅代のだった。 初めて雅代に挨拶にった際、彼女は芹の実の所や両親の職業を根掘り葉掘り聞きそうとした。芹が「父は貿易会社の役員を定退職し、今はのんびり暮らしています」
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と曖昧に濁すと、雅代の態度は変した。 「まあ、退職だけで暮らしているような庭なのね」「娘だからって甘やかされて育ったんじゃないかしら」「うちの智也は柄の良いお嬢様からも引くあまただったのに、運が良いこと」 面と向かって放たれる無慮で無礼な言葉の数々。
それでも芹は、智也へのと、結婚という契約に対する責任から、今まで辛抱く耐えてきた。親の世代の価値観が古いのは仕方のないことだと、自分を納得させようとしていたのだ。
だが、今の座のブティックでの来事が、芹のに残っていた最の慈を完全に消しった。
『親にそう教わったの? 持ちの男を捕まえて玉の輿に乗れって』
あの言葉をいすたび、芹の瞳の奥に徹なが宿る。 芹の父は、代で塚グループを築きげた誇りき実業だ。どれほど事業が拡しても決して傲にならず、現の職や取引先への謝を忘れず、芹に対しても「誠実さと品性こそが最の財産だ」と教え込んできた。母もまた、控えめながら芯のい女性で、常に周囲への気配りを欠かさないだった。
その両親を、あのようなっぺらな成趣の女に侮辱されたのだ。 許せるはずがなかった。 智也が話で見せた「嫁になるんだからしろ」
という勝な態度も、彼が本質に母親と同類のであることを完全に証していた。