"泥棒猫と呼ばれた令嬢の即日破談" 第6話
その瞬、スピーカーから鼓膜を破らんばかりの声が炸裂した。
『もしもし! 母さん!! おい、体何があったんだよ!? どういうことだか説しろよ!!』
智也の叫び声は、半狂乱そのものだった。 背景からは、居酒かバーの騒がしい喧騒がかすかに漏れ聞こえていたが、智也自の声は完全にパニックに陥っていた。
「と、智也……あ、あなた、どこに……」
『どこにいるかなんてどうでもいいだろ! 芹からいきなり話がかかってきて、『の程を弁えて結婚はにする』って言われたんだぞ! 式のキャンセル料もこっちで払えって! その何回かけ直しても着信拒否されてて繋がらないんだ! 母さん、あんた芹に何言ったんだよ!? 何をやらかしたんだよ!!』
雅代はをパクパクと魚のように閉させたが、声にならなかった。 自の息子、いつも自分の方をしてくれて、母親の嫌を損ねないようにち回っていた優しい息子が、まるで親の仇のように自分を罵倒している。その事実が、雅代の残された精神を容赦なく削り取っていく。
「だ、だって智也……あの子、あんなな格好をして、あなたのおを当てにしてる棒猫みたいに見えたのよ……! 私、あなたの将来のために、母親としてガツンと言ってやらなきゃとって……!」
『はぁ!? 棒猫!? を当てにしてるだと!? 何言ってんだよ母さん! 芹の父親が誰だかってて言ってるのか!?』
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智也の叫び声に、雅代は背筋が凍りつくのをじた。
「え……? 智也、あなた、ってたの……?」
『るわけないだろ! 芹はただ『実は貿易関係の仕事をしてる』としか言ってなかったんだ! でも今、芹と共通のだった商社の先輩に慌てて連絡して確かめたら……塚グループの会の娘だって言われたんだぞ! 塚グループだぞ!? うちの会社が喉からがるほど取引を取りたがってる、あの国内最の流通コングロマリットの塚ホールディングスだ!!』
智也の荒い呼吸が受話器越しに伝わってくる。その声はりを超えて、底れぬ恐怖に震えていた。
『俺が……俺がどれだけ苦労して芹と仲良くなって、婚約まで漕ぎ着けたとってるんだよ! 芹の実が太いって々づいてたからこそ、俺は絶対にこの結婚を成功させなきゃいけなかったんだ! 塚グループの令嬢の夫になれれば、俺の社内での世なんて約束されたようなものだったんだぞ! なのに……なのに何で母さんがぶち壊すんだよ!!』
「そ、そんな……でも智也、あなた普段、あの子のことを『俺の収入に惹かれてついてきた従順な女だ』って言ってたじゃないの! だから私、あの子がつけあがらないようにを教えてやろうと……!」
『それは母さんをさせるための男の見栄に決まってるだろ!! なんでそんなことも分からないんだよ、この馬鹿親が!!』
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罵声が炸裂した。 雅代の脳内で、何かが決定に音をてて砕け散った。 自の息子。自分のき甲斐。その息子から「馬鹿親」と吐き捨てられたのだ。
『俺のをどうしてくれるんだよ! 式の違約だって、あそこの格式いホテルなら数百万円単位で発するんだぞ! 俺の取りで払えるわけないだろ! 婚約指輪の代だってまだ全額払ってないんだ! どうすんだよこれ!!』
「智也、落ち着いて……落ち着きなさい、まだなんとかなるわ……! 私が座して謝れば、あの子だってが湧いて……」
『謝って済むレベルかよ!! 相は本物の財閥令嬢なんだぞ! 俺たちの顔なんて度と見たくないって言ってたんだ! 終わりだ……俺の世も、将来も、全部終わりだ……! 全部あんたのせいだ、あんたのその卑しい見栄のせいだ!!』
方に話が切られた。 ツーツーという乾いた子音だけが、元に虚しく響く。 雅代は座の歩の真んで、スマートフォンの画面を見つめたまま、へなへなと座り込みそうになるを必に踏ん張った。く々が、奇異なものを見る目で彼女を避けて通り過ぎていく。誰も雅代を助けようとはしない。かつて自分がに注いできた淡な線が、そのまま百倍になって自分へとね返ってきていた。
同じ頃、芹は座の喧騒をれ、黒塗りのハイヤーの部座席にを沈めていた。