"泥棒猫と呼ばれた令嬢の即日破談" 第5話
の程をるべきだったのは、ならぬ自分自と、己のの丈を見誤った息子の方だったのだ。
「あ、あの……さん」
雅代は縋り付くように顔をげ、震えるで膝を支えながらちがろうとした。そのきは見るもなく老け込み、先ほどまでの尊な態度は跡形もなかった。
「さっきのは、その……ちょっとした勘違いというか、嫁姑の親のゆえの冗談のようなものでして……。ほら、私とあの子は、これから族になる仲ですから。しばかり厳しいことを言ったのも、今の庭をっての教育配慮で……」
見苦しい言い訳を並べてる雅代に対し、の差しには片の温もりもなかった。 接客のプロとして常に浮かべていたはずの柔な笑みは完全に消え失せ、底えのするような徹さがその端正な顔ちを支配していた。は歩ろへがり、まるで汚物に触れることを避けるかのように、雅代とのに厳然たる距を取った。
「お客様。言い訳は結構でございます」
氷を擦りわせたようない声だった。
「当は、お客様が私なを持ち込み、のお客様や当社の役員に対して侮辱な言を浴びせるではございません。先ほどのお客様のご発言、および連の為は、到底過できるものではございません」
「そ、そんないこと言わないでちょうだい! 私だってこのでそれなりにおを使ってきた客でしょう!? VIPカードだって持っているのよ!?」
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雅代は必にバッグからゴールドに輝くメンバーズカードを取りし、のに突きした。これ見よがしに掲げられたカードは、雅代がこれまでに注ぎ込んできた虚栄の結晶だった。だが、はそのカードをちらりと瞥しただけで、微だにしなかった。
「そのVIP会員資格に関しましても、当社のブランドイメージを著しく毀損する背信為が認められた、即座に剥奪できる旨が規約に記されております。先ほどの連の言は、分に対象事由に該当いたします」
「は……? 剥奪……? 冗談でしょう!?」
「冗談など申しげるにございません。また、当フロアに設置されておりますセキュリティカメラには、お客様の発言およびのすべてが精細な映像と音声で記録されております。これらはすべて、本部の専属法務チームへと直ちに共されます」
が静かに目配せをすると、背に控えていた屈なセキュリティスタッフ名が無言で歩み寄ってきた。無表な男たちの威圧に、雅代はわず息を呑み、ずさりした。
「本のところは、速やかにお引き取り願えますでしょうか。これ以お引き止めするようであれば、威力業務妨害として警察へ通報せざるを得なくなります」
「け、警察ですって……!? 私が何をしたっていうのよ! 息子の嫁候補にちょっと説教しただけじゃないの!」
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雅代のヒステリックな叫び声が響くが、内のスタッフは誰として同の線を向けない。巻きに見ていたの裕福な顧客たちも、ハンカチで元を覆いながら、れみと軽蔑の入り混じったややかな目で雅代を観察していた。 「まあ、あんな品のない方が……」「息子の婚約者にあんなの利き方をするなんて、どんな育ちかしらね」「度と顔をわせたくないわ」 囁きわれる声が、鋭利な針のように雅代の鼓膜に突き刺さる。社交界での見栄とプライドを何よりもんじてきた雅代にとって、この衆環のなかで晒し者にされる屈辱は、に至るほどの苦痛だった。
「ひっ……!」
雅代は喉から鳴のような嗚咽を漏らすと、振り向くこともできず、引きずられるようにしてブティックのな扉を押しけ、逃げるように座の通りへと転がりた。
の昼がりの陽が、雅代の目を容赦なく射る。 きらびやかな並みので、彼女はまるでをかけられた乞のように惨めだった。膝の震えが止まらず、数歩歩くごとにヒールがもつれる。 その、バッグのでけたたましくスマートフォンが振を始めた。
画面には、きく「智也」の文字が表示されていた。
雅代は凍りついた指先で通話ボタンをスライドさせ、元へと押し当てた。