"泥棒猫と呼ばれた令嬢の即日破談" 第4話
『……え? な、何言ってんだよ芹。って、式ももう内定してるし、両の顔わせだって……冗談だろ?』
「冗談ではありません。お母様は、私があなたの財布をあてにして贅沢をしようとしている、どこの馬の骨ともれない女だと仰いました。私の両親の育て方まで侮辱されました。そのようなご庭と親戚関係を結ぶことなど、私にとっても、私の族にとっても耐え難い屈辱です」
『お、おい、ちょっと待てって! 母さんが失礼なことを言ったなら俺から謝るから! 母さん、そこにいるんだろ!? おい母さん、何をやったんだよ!』
智也の焦燥に満ちた叫び声が響く、雅代は崩れ落ちるようにそのにへたり込み、両で顔を覆って震えていた。もはや言葉を発する気力すら残っていなようだった。
「智也さん。お母様のご希望通りにして差しげたのですから、謝していただきたいくらいです。婚約指輪の付や式のキャンセル料については、私の弁護士を通じて週けに正式にご連絡します。私に関する費用はすべてこちらで清算しますが、そちらの都で発する違約については、規約通りご自でお支払いください。それから、度と私にも、私の族にも連絡してこないでください」
『芹! 待ってくれ、芹!! 頼むから話を――』
芹の細い指先が、画面の赤いボタンを容赦なくタップした。
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通話は無にも切断され、内には再び凛とした静寂が戻った。
芹はスマートフォンをポケットへと戻すと、へたり込んだままきの取れなくなっている雅代には目もくれず、に向かって優雅に微笑みかけた。
「。こちらの作のバッグ、とても素らしい縫製ですね。ディスプレーの配置も申し分ありません。次のシーズンの展も、この調子で現のスタッフの皆さんとめてください」
「はっ……! 畏まりました、本部。に余るお言葉、栄にじます」
が再びくをげた。
芹は度だけ、元でさく震える雅代を瞥した。その線にはもはやりの欠片もなく、ただ通りすがりのころを見るような、徹底した徹さだけが宿っていた。
「では、私はこれで失礼します」
カツン、カツンと、質なレザーの靴音を理のに響かせながら、芹は背筋を伸ばし、堂々とのへと歩みをめた。自ドアがくと、座の眩い午のとよいのが彼女を包み込んだ。自分のの綱をに預けることなど度とない。その確信と誇りを胸に、芹は澄み渡る青空のへと、軽やかな取りで踏みしていった。
その背が完全に雑踏へと消えったも、ブティックのは息の詰まるような圧に支配されていた。
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理のたさが、いつくばった雅代の膝から骨の髄へと染み渡っていく。 指先に巻かれたのリングも、首元でぎらつくパールのネックレスも、今となっては己の浅ましさを嘲笑う荷でしかなかった。喉の奥がカラカラに渇き、激しく脈打つ臓の音が元で鳴りのように響く。額からは脂汗がとめどなく流れ落ち、完璧に塗り固めたはずのファンデーションを醜く崩していた。
「な、何かの違いよ……そうに決まっているわ……」
雅代は、を見つめたまま震える声で呟いた。誰に向けたともれないその言葉は、々しく宙に散する。 息子の智也は流商社に勤める自のエリートで、収も同世代と比べれば格段にい。自分はその母として、いつだって周囲の主婦仲から羨望の差しを向けられてきたのだ。息子の稼ぎを当てにして擦り寄ってくる娘を品定めし、躾けてやることこそが母親としての崇な義務だと信じて疑わなかった。
だが、現実はどうだ。 その娘と蔑んでいた相は、自分がぬほど見栄を張って通い詰めていたこの老舗メゾンの、本国内すべての利権を握る統括企業の令嬢であり、実質な最責任者だった。 息子の収など、彼女がつの舗をかす予算の端数にすら届かない。智也の勤める会社すら、この流通グループの傘企業と取引があるかないかという圧倒な力関係の差。