"泥棒猫と呼ばれた令嬢の即日破談" 第3話
ならびに、当ブランド事業の全権を統轄されております事業本部でございます」
の言言が、雅代の脳に鉄槌のように打ちろされた。
独占輸入元の会の娘。 事業統轄本部。
「な……なんですって……? 会の、娘……? 本部……?」
雅代の顔から血の気が引いていくのが目に見えて分かった。先ほどまでの傲な潮は瞬くに消え失せ、気の蒼さがその皮膚を覆い尽くしていく。首のバングルが、彼女自の激しい震えによってカタカタとけない音をてて鳴り響いた。
この級ブランドを本国内でに引き受け、百貨や直営の展を支配している巨流通グループのトップ。そのトップの娘であり、実質な最責任者。それは、雅代が頃から誇らしげに語っていた「流企業に勤める自の息子」の収や位など、元にも及ばないどころか、比べ物にすらならないののであることをしていた。雅代がに物狂いで見栄を張って買い集めていたブランド品そのものを、供し、支配している頂点のが、いま目のにっているのだ。
「そんな……嘘でしょう……? だって、普通のOLだって……智也もそんなこと……」
雅代の膝ががくがくと震え、崩れ落ちそうになるのを必で堪えていた。息子のをいものにするどころか、息子の勤める会社ですら、このグループの取引先のつに過ぎない能性すらあった。
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玉の輿に乗ろうとしていたのは芹ではなく、むしろ息子の智也の方だったのだ。もしこの縁談が成していれば、智也の柄など比較にならないほどの莫な恩恵を受けるはずだった。
それを、自分自の浅ましさと傲さによって、完膚なきまでに叩き壊したのだという事実が、遅まきながら雅代の脳裏を支配し始めていた。
芹は、そんな雅代の狼狽をただ徹な瞳で見ろしていた。そこには同も、嘲笑すらもなかった。ただ、完全に興を失った対象を見る、絶対な無関があるだけだった。
「お母様」
芹が静かに呼びかけると、雅代の肩がビクッとねがった。
「私の親の教育について、ずいぶんにご指導をいただきましたね。父からは常々教えられてまいりました。『を見るは、肩きやにつけているものではなく、その者の言葉遣いと品性を見ろ』と。私はこれまで、智也さんのご族に対しても誠を持ってお付きいをさせていただくつもりでおりました。ですが……」
芹はコートのポケットから、最型のスマートフォンを取りした。画面をタップし、迷うことなく智也の連絡先を呼びす。スピーカーモードに切り替えられたコール音が、静まり返ったフロアに規則正しく鳴り響いた。
雅代が「あ、待って、芹さん、それは……!」
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と震えるを伸ばそうとしたが、が歩にちふさがり、その無礼な接を静かに、しかし断固として遮った。
ツーツーという呼びし音が数回続いた、カチリと通話が繋がった。
『もしもし、芹? どうしたんだよ、珍しいな。俺いま友達とんでるんだけど。あ、もしかして先週話してたレストランの予約取れた? 母さんも緒にきたいって言ってたから、番いコースにしといてくれよな』
話の向こうから聞こえてくる智也の能気で尊な声が、スピーカーを通じてこのにいる全員のに届いた。雅代はその声を聞くたびに、まるで刑宣告を待つ罪のように顔を歪め、首を横に振って絶望に打ちひしがれている。
芹は微もを揺らすことなく、澄んだ、凛とした声で受話器に向かって告げた。
「もしもし、智也さん。今、あなたのお母様に『の程をれ』と言われました」
『……は? なんだよそれ。母さんがまた何か言ったのか? まぁ母さんも悪気はないんだからさ、おがうまくててやってくれよ。嫁になるんだから、それくらいするのが普通だろ?』
相変わらずの無神経な返答に、芹の唇の端にわずかな笑が浮かんだ。
「ええ。ですから、お母様の仰る通り、の程を弁えさせていただくことにいたします。あなたとの結婚は、に戻します」
通話の向こう側が、ぴたりと静まり返った。