みかん小説
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"3年墓参りした義父が、古い家の壁の奥で呼んでいる" 第14話

誰かの嫌を窺って、息を潜める必もない。

スーパーで買った季節の野菜を刻み、自分のためだけに噌汁を作る。 お呂がりに、たい麦茶をみながら夜にあたる。 そんな当たりの常のつひとつが、信じられないほど甘美で、尊かった。

曜の午。 私はに揺られ、義父のいる施設を訪れた。

庭のテラスには、初の陽がり注いでいた。 子に座った義父が、向ぼっこをしながら緑の々を眺めている。

「お義父さん」

声をかけると、義父がゆっくりと振り返り、目尻を細めて破顔した。

「おお、直子さん。来てくれたのか」

「はい。はい、これ、くの菓子さんで見つけた羊羹です。先に聞いたら、しならべていいって」

「そりゃあ嬉しい。あそこの飯もうまいが、甘いものが恋しくてな」

義父の隣のベンチに腰をろす。 施設の入れのき届いた芝のを、爽やかなが吹き抜けていく。

プラスチックのスプーンで羊羹をに運んだ義父が、「うまいなあ」とく息を吐いた。

かつて、あの暗のれで、壁の向こうから聞こえた掠れた声。 「直子さん、助けて」 あの絶望の叫びは、もうどこにもなかった。

「直子さん。しい部は、どうだい」

「すごく静かで、当たりがよくて……とても気に入っています」

「そうか。そうか、よかった」

義父は穏やかに頷き、青く澄み切った空を見げた。

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「これからは、おの好きなを飾りなさい。おの好きなを着て、おのきたい所へきなさい」

「……はい」

バッグのには、あのさな桐の箱が切に入っている。 桜のカードは、私のしい部の机の引きしに、お守りのように仕ってあった。

、私は獄のようなに縛られていた。 けれど、その暗の底で、私を本物の娘としてし、守ろうとしてくれたがいた。

血の繋がりなんて、何のもなかった。 契約や世体で縛られた族ごっこよりも、あの暗ので交わした魂の言葉のほうが、何千倍も本物だった。

「お義父さん、また来週も来ますね」

ちがり、を振ると、義父も力くを振り返してくれた。

施設のをて、駅へと続く坂を歩く。

見げた空は、どこまでもく、どこまでも青かった。 の嵐は完全にり、に満ちたしい季節が始まっていた。

苦しんだあのから、私を最に送りしてくれたのは。 、んだと聞かされていた、あのの温かいだった。

私はく息を吸い込み、を向いて、確かな取りで歩きした。

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