みかん小説
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"認知症の父がベッド裏に隠したノート" 第1話

私の名は杜若菜、今で歳になる。平の午から昼過ぎにかけて、所のさな品卸の事務所でパートタイムの事務員として働きながら、の息子の母親として慌ただしい毎を送っている。

まれも育ちも京の町だった私が、卒で就職した商社の辞令本で神戸支社へと異になったのは、もうものことになる。見らぬの坂やからの湿ったに戸惑いながらも、配属先のフロアで親切に仕事を教えてくれた同僚の悠也と会い、やがて恋に落ちて結婚を決めた。それ以来、私は度もこのをれることなく、ずっと神戸ので根を張り、暮らし続けている。

神戸の空ので過ごしたというは、私というを静かに、けれど確実に塗り替えていった。関の乾いたに慣れていた皮膚は、瀬戸内の柔らかな差しに馴染み、所のスーパーの馴染みの員や、保護者会で親しくなったママ友たちと言葉を交わす際にも、識することなく自然な関弁がをついてるようになった。イントネーションの端々に引っかかりを覚えることも、今ではまるでない。私は、とに挟まれたこの美しいを、底からしていた。

に度、京へ戻るのは正がを挟んだほんの数くらいのものだった。

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実のところを言えば、まれ育ったはずの京という巨なも、環沿いにある古びた実も、今の私にとってはどこかいののようにじられてならなかった。あの埃っぽいアスファルトや、どこかややかな空気のには、もう私の本当の居所など残されていないのだと、帰省するたびに胸の片隅が疼くような寂しさを覚えていた。

「ただいまー」

玄関の引き戸がガラリとき、元気な音とともに響いた声に、私は台所で夕飯のごしらえをしていたを止めて顔を向けた。 次男の智は、元の公学に通うだ。玄関でスニーカーの踵をきちんと揃えて脱ぐと、汗で額に張り付いた髪を拭いながらリビングへと入ってきた。背負っていたランドセルを子にろすなり、彼は机のに教科とノート、そして通っている学塾の分い算数のテキストを際よく広げ、誰に言われるでもなく鉛を握りしめて宿題に取りかかり始めた。 誰に似てこれほど几帳面で真面目な性格に育ったのかと、母親である私自がしてしまうほど、智は自分のやるべきことを淡々とこなすしっかり者だった。

その智のすぐ隣、フローリングのにの字になって寝転がっているのは、男の輝だ。今学に入学したばかりの学で、兄とは対照に、ランドセルは廊の真んに放りされ、脱ぎ捨てられたの靴はリビングの入りに丸まったまま放置されている。

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に転がった輝は、さな指先で携帯ゲームのボタンを忙しなく連打しながら、画面にになっていた。その脱力しきった無防備な背や、片付けを回しにする領の悪さは、まるで私の幼期をそのまま切り取ってきたき写しのようだった。

「輝、あんたまた靴脱ぎっぱなしにして。お兄ちゃんを見習って、ランドセルくらいちゃんと自分の棚にしまいなさい」

洗い桶のを止め、濡れたをエプロンで拭きながら私が声を潜めて叱りつけると、輝はゲーム画面から切線を逸らさないまま、気盛りの調で軽やかに言い返してきた。

「えー、だって僕、ママの子やもん。無理やわー」

お兄ちゃんみたいになれるわけないやん、と言わんばかりの態度で肩をすくめられ、私は吹きしそうになるのを堪えながら溜め息をついた。 すると、鉛をらせていた智がノートからふっと顔をげ、呆れたようにの弟を見ろした。智は静かに子からちがると、落ちていた輝の靴をつまみげ、廊に転がっていたランドセルを抱えげた。

「ママの子やからこそ、ちゃんと片付けへんかったら部が散らかる方になるやろ。

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