"恩人面する夫の47分" 第3話
「奥様。先ほどご報告した、規コンサルタント会社への3,000万円の送の件です。相方の会社『エム・ソリューションズ』、商業登記を取りました」
用が差しされる。 代表取締役の欄には、別の男の名。 しかし、主株主の欄と、設の資本振込座の名義を見て、息が止まった。
『伊藤美穂』
「ペーパーカンパニーです」 さんの声に、押し殺したりが滲む。
「業務実態は切ありません。以から額の審な業務委託費が流れていましたが、今回は3,000万円。会社の当座預をほぼ空にする額です。曜の朝番で決済を通すよう、社から厳命されています」
「……夫は、会社を潰す気なんですね」
私の声は、自分でも驚くほどえ切っていた。
「潰すというより、資をの会社へ逃がし、藤原精の経営権を図に放棄する算段でしょう」 本先が鏡のブリッジを押しげた。
「そして由美さん。あなたが持参された、その消防庁の記録ですが」
私はポケットから、あのつ折りのを取りし、テーブルに置いた。
「どうして、夫がこれを持っていたんでしょうか」
本先はいため息をつき、元の別の類――のビルの入退館記録と、警察の事聴取報告の控えを並べた。
「あの、先代がくなられた20221118。先代は午5半、私に話をかけてこられました」
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「父が……先に?」
「ええ。『浩司の独断による透な原材料の仕入れが見つかった。来週曜、あいつの代表権を止し、特別監査を入れる』と。先代は、浩司くんの正に完全に気づいておられたのです」
臓が、激しく鐘を打つ。
「そのの夕方、先代は社の庫に、その正取引の証拠類式を保管していました。そして午67分、浩司くんが社に入った」
本先の指先が、類の刻をなぞる。
「1807分に入館。そして119番通報がなされたのは、1854分。通報の音声記録の示請求を検討していますが、当の救急隊のメモには、浩司くんがこう言ったと記録されています」
『たった今、部に入ったら倒れていた』
喉の奥から、ヒュッとたい空気が漏れた。
たった今? 47分もにビルに入っておきながら?
「由美さん」 さんが、消え入りそうな声でをいた。
「実は……あの、残業していた製造部の女子社員が、だけいたんです」
「え……?」
「彼女、怖くてずっと言えなかったと、昨私に打ちけてくれました。あの、18半頃、忘れ物を取りに2階の事務所へ戻った際、社からてくる浩司社を見かけたと」
さんの拳が、テーブルのでくなるほど握りしめられた。
「浩司社は、酷く怯えた様子で、に『赤いファイル』を抱えていたそうです。そして彼女にこう言った。
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『親父さんはで休んでいるから、絶対に邪魔をするな』と」
界が、ぐらりと揺れた。
赤いファイル。 父が、最もな密類を入れるために使っていた、革張りのファイル。
父が倒れていた部。 苦しみ、息絶えようとしていた父のすぐそばで。
夫は何をしていた?
救急を呼ぶに。 呼吸をするに。 助けを求めるに。
あのは――庫をけていた。
自分の正を暴く類を奪うために。 倒れている父を元に見ろしながら、暗証番号を回し、ファイルを抜き取っていた。
……そして、息が止まるのを、待っていた?
ので、何かが音をてて砕け散った。
しみじゃない。 絶望ですらない。
全の血液が、沸騰したに瞬で氷へと変わるような、昏い、底れないり。
「本先」
私のからた声は、く、濁りなく澄んでいた。
「はい」
「曜の臨役員会。私が株主として席します」
本先とさんが、同に顔をげた。
「会社のも、父の会社も、1円たりともあのには渡しません。そして――」
私はテーブルのの搬送記録を、静かに引き寄せた。
「、あの部で本当は何が起きたのか。あの男のから、全部吐きさせます」
夜のオフィスへると、たいのが頬を打った。 吐く息が、く濁る。
自宅へ戻ると、リビングのかりがついたまま、夫がまだソファで酔して眠りこけていた。
け放たれたから、な呼吸音が漏れている。
私は無言で寝へ向かい、クローゼットの奥から、父の古いボストンバッグを引きした。