"恩人面する夫の47分" 第2話
その瞳の奥にあるのは、同ではない。 確な、嘲笑と蔑。
「伊藤さんの言う通りだ。おい、美穂。の件、例の契約は完璧だな?」
夫が声を潜め、美穂に顔をづけた。 酒の匂いと、美穂のっぽいバニラのが混ざりう。
「はい、社。規事業の業務改善コンサルティング契約、総額3,000万円です。私のが代表を務める会社ですから、続きは滞りなくみます」
「よし。来週曜には送を実する。親父の作った古い設備なんて全部スクラップにして、しい事業に資を回すんだ」
美穂が満そうに元を歪めた。
は、私が何も気づいていないと信じ切っている。 私がただの無な妻で、背で何を囁かれてもすら理解できない置物だと、疑いもしない。
台所へ戻り、蛇を捻った。 たいが、傷したの甲をやしていく。
エプロンのポケットので、スマートフォンが度だけく震えた。
画面を点灯させる。 メッセージの送り主は、誠。 父の代から経理を筋に支えてきた、経理部のさんだった。
『奥様、お話ししていたデータ、すべて揃いました。裏取りも完しています。法が終わられた、本先の事務所でお待ちしております』
鼓が、トクンとねた。
私は呼吸をして、ポケットから本の古い万を取りした。
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父が肌さず持っていた、黒い軸の万。 さな傷が幾にも刻まれた、職の誇りのようなペン。
、父が急逝した直。 顧問弁護士の本先から、父の公正証遺言を渡された。
そこにかれていたのは、残酷なまでの現実だった。
父は会社の代表権を浩司に譲る形を取りながらも、発済み株式の60パーセント――株主としての議決権を、すべて私刀に相続させていたのだ。
『由美。浩司くんは優秀だが、欲がすぎる。もしあいつが会社を私物化しようとしたら、この株を使って止めなさい』
父は病で、本先にそう言い遺していたという。
けれど私は、その権利を使しなかった。 父を失ったショックと、会社を背負ってくれている夫への慮。 そして何より、「父の第発見者としてを尽くしてくれた夫」への負い目があったからだ。
経営は夫に任せ、私は歩引いて庭を支える。 それが父への供養だと信じ込んでいた。
愚かだった。 私のその慮と沈黙が、夫の傲さを肥化させ、父の会社をい物にさせていたのだ。
午を回り、親族たちが々々引きげていった。 最に残った義母――千代子は、玄関で靴を履きながら、私を睨みつけるように言った。
「由美さん、あなたね。浩司が毎どれだけ苦労してるか分かってるの? 今だって、あの子が社として派に振るってくれたから格好がついたんじゃないの」
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「……はい」
「先代がくなったもそうよ。浩司がいなかったら、この会社はとっくにに渡ってたわ。あなた、浩司に謝しなきゃバチが当たるわよ」
、謝しろ。 の奥で、その言葉が鋭く反響する。
「お義母様」
わず、声がた。
「何よ?」
「……あの夜のこと、浩司さんから何か聞いていらっしゃいますか?」
義母のが、ピクリと止まった。 玄関の暗がりので、義母の目が泳いだのを、私は見逃さなかった。
「な、何を急に言いすのよ。急だったんでしょうが。浩司が見つけてくれたから、警察の引き取りもスムーズに済んだんじゃないの。変な言いがかりはやめなさい!」
まくしてるような。 そして、逃げるように背を向け、乱暴にドアを閉めててった。
胸のざわめきが、確信に変わっていく。
何かがある。 あのが隠しているのは、単なる資の横領だけじゃない。
夫がリビングのソファでいイびきをかいて眠り始めたのを見届け、私はコートを羽織ってをた。
タクシーを拾い、都にある本法律事務所へと向かう。
事務所の応接には、髪の本弁護士と、疲れた顔をしたさんが待っていた。 テーブルのには、何冊ものファイルと、見慣れない通信記録の束が積まれている。
「由美さん、よく来てくださいました」
本先が静かにをげた。
さんが、震えるで冊のバインダーをく。