"夫の賞与を全額カットした私に残された離婚届" 第10話
私と川圭はやましいことなんて何もないわ。これ以でたらめを言うなら名誉毀損で訴えるわよ」
はガラスが割れるような障りな笑い声をあげた。
「やましいことがないですって?」
彼女は嘲笑うように言った。
「やましいことがないのに、2きりで横浜でお泊まりするの?はるか、自分がお持ちで社だからって、何でもい通りになるとわないで。私を甘く見ないでよね。お兄ちゃんの髪の毛1本でも傷つけてたら絶対に許さないから!」
私のこめかみがピクッとねた。
2きりで横浜でお泊まり。
この言葉がトゲのように脳裏に突き刺さる。
誰が彼女に言ったのか。
修か。
彼は妹にこの来事をどう説したのだ。
「兄は別の女と横浜に泊まった」ではなく、「義理の姉が別の男と関係を持った」と。
体どう言ったのだ。
私は声を押し殺し、字句はっきりと伝えた。
「、最に1度だけ言うわ」
私は呼吸をした。
「第1に、私はあなたのお兄ちゃんがどこにいるからない。彼はから荷物をまとめてていき、婚届を置いてったわ。第2に、私と川圭はただの友達。幼い頃から緒に育っただけ。これ以デマを流すなら、法廷で会いましょう」
言い終わると同に通話終ボタンを押した。
スマホの画面が暗くなり、すぐにまたる。
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同じ番号からだ。
私はなかった。
8回鳴って切れた。
すると、別の番号からかかってきた。
今度は野ではない。
京の局番。
でも私はこの番号をっている。
修の母親の番号だ。
画面を5秒見つめてからた。
「もしもし」
私は「お義母さん」と呼んだ。
どうであれ、彼女は私の姑だから。
「はるかさん」
彼女の声はとは全く違い、ゆっくりとしていて、し気遣うような、恐る恐る探るような声だった。
「修のことなんだけど、の言うことは気にしないでちょうだい。あの子はが悪いだけで根は悪くないの」
私は疲労から眉を揉み、背もたれに寄りかかった。
「ご用件をどうぞ」
話の向こうで数秒の沈黙があった。
彼女が軽くため息をつくのが聞こえる。
そのため息には複雑なが混ざっていた。
彼女は静かに尋ねた。
「修は本当に、あなたに婚を切りしたの?」
私は事実だけを伝えた。
「はい。婚届も置いていきました。1つで、1銭もいらないと」
またい沈黙。
向こうで息をしているのが聞こえる。
齢者特の、し喘ぐような呼吸音。
そして彼女はポツリと、独り言のように呟いた。
その声はとても軽かった。
「あのバカ息子も、ようやく羽ばたいたわね」
私は瞬言葉を失った。
彼女の調にはりも痛も、「息子がそんなことをするなんて」という驚きもなかった。
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あったのは、堵のような響きだった。
聞き違いじゃないよね。彼女、んでる。
「はるかさん」
彼女の調が急に穏やかになり、別のようになった。
「お母さんも、今回は修が悪いとってるのよ。衝すぎたわね」
彼女は諭すように言った。
「でも、夫婦なんて喧嘩してもすぐ仲直りするものじゃない。緒になるのは変だったんだから、些細なことで別れるなんてだめよ」
彼女は優しい声を作った。
「あなたはいい子だわ。お母さん、ずっとあなたのこといい子だとってたの。ただ、し仕事すぎるだけ。男のだってやっぱり、誰かにそばにいて欲しいものよ」
私は黙って聞いていた。
「これからはもうし庭に気を使ってあげて。修もきっと分かってくれるわ。配しないでお母さんがで話して叱っておくから、すぐに帰って謝るように言うわね」
彼女の言葉は次から次へと紡がれ、穏やかで優しく、まるで私のことを気遣っているかのように聞こえる。
仲直りさせようと私を助けようとしているかのように。
しかし、聞けば聞くほど、私の背筋はたくなっていった。
なぜなら彼女は、最初から最まで1つも質問しなかったからだ。
川圭って誰?個展ってどういうこと?体何が原因でこんなことになったの、とは聞かなかった。
彼女は全く気にしていないのだ。
私が浮気したかどうかも、修が誤解しているかどうかも。
彼女はただ、の先輩としてのな態度で、私に説教しているだけだ。