"夫の賞与を全額カットした私に残された離婚届" 第7話
故ではない。
が真っになっていて、がアクセルを踏み込んだまま、信号が変わっていたのだ。
会社の駐に着くとエンジンを切り、内で丸10分座り込んだ。
そして呼吸を1つしてのドアをけ、ハイヒールを鳴らしてエレベーターへ向かった。
エレベーターのドアがき、ロビーに入る。
受付の女性が顔をげた。
「社、おはようござ……」
言い終わらないうちに私の顔を見て、言葉の半をみ込んだ。
彼女はうつむき、机のの郵便物を理するふりをした。
エレベーターに乗り、32階のボタンを押す。
エレベーターは各階で止まった。
乗ってくるは皆、私を見ると同じ反応をした。
瞬驚いた、素くうつむいてスマホを取りし、画面を見ているふりをする。
誰も挨拶してこない。
いつもなら違う。
いつもなら彼らはなくとも笑顔で「社」と呼び、「今はいい気ですね」とか、「今はエレベーター混んでますね」と声をかけてくる。
今は誰もいない。
エレベーターのは霊のように静まり返っていた。
32階に到着し、フロアにる。
オフィスエリアでは全員がデスクに向かい、画面がり、タイピングの音が響いている。
忙しそうに見えるが、私が通りすぎる、なくとも3が横目で私を見たのをじた。
その線には好奇、恐れ、そして野次馬根性が混ざっている。
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私はち止まることなく、廊の奥へとんだ。
技術発部は1番奥の独したエリアにある。
ガラスのパーティションの入りには「技術部」というプレートが掲げられている。
ドアをけてに入る。
には20ほどのプログラマーとエンジニアが座っていた。
チェックのシャツ、鏡、雑然としたデスク。
スーツを着たの部署の連とは全く違う。
私が入った瞬、全てのタイピング音がピタリと止まった。
20以の線が斉に私に向けられ、そしてまた斉にに向けられた。
森田が1番奥の席からびがり、子がろに滑ってガクッとぶつかった。
彼は26、7歳の痩せ型で、分いメガネをかけ、髪は3洗っていないようにいつもボサボサだ。
「社」
彼の声は震えていて、のやりに困り、ポケットに入れたりろに回したりしている。
私は挨拶も置きもなしに単刀直入に聞いた。
「修の荷物はどこ?」
森田は瞬ためらい、振り返って隅にあるダンボール箱を指差した。
引っ越し用のダンボール箱で、ECサイトのロゴが印刷され、ガムテープが2周巻かれている。
彼はうつむき加減で言った。
「修主任が辞める、これらのものはもういらないから、奥に、奥に処分してくれって」
私は歩み寄り、しゃがんでダンボール箱をけた。
には、を殴り殺せそうなほど分い技術が数冊、使い古したノートが3冊半。
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黒いハードカバーの端はすり切れてくなっている。
会社のロゴが入ったいマグカップには細かいヒビが入っていた。
そして、のひらサイズのさなサボテン。
素焼きの鉢に植えられ、丸みを帯びたトゲのにさな芽がている。
鉢の側面には黒い油性ペンでスマイルマークが描かれていた。
そのスマイルマークは歪んでいて、角は片方がく、片方がい。
目はの異なる2つの丸。
私はこのスマイルマークをっている。
それは私の跡だ。
3、彼が入社した、私は暇つぶしに油性ペンで彼の鉢植えにスマイルマークを描き、「入社完ね」と言った。
彼はその笑って答えた。
「社の絵、すごく抽象ですね」
彼がこれを3も取っておくとはわなかった。
退職するにのものは全て捨てたのに、このボロいサボテンだけは残していたなんて。
私はそれを持ちげた。
素焼きの鉢の底はし湿っていた。
彼はるにをやっていたのだ。
の奥がツンとし、私は慌ててサボテンを箱に戻してちがった。
私は森田に向き直って尋ねた。
「彼がった、あなたたちに何か言った?」
森田はメガネを押しげ、線をそらした。
「いいえ、特に何も。ただ続きをして、それから、それからみんなに駅の居酒でご馳してくれました。
送別会です」
「送別会?」
その言葉に引っかかった。