"夫の賞与を全額カットした私に残された離婚届" 第3話
巨で、荒唐無稽で、皮がしびれるほどの疑問が、ブラックホールのように私を丸ごと吸い込んでいく。
自分がどうやって社をたのか覚えていない。
野がろからついてきて、2度ほど私を呼んだ。
「社」
私はをげて彼女を制し、何も言わせなかった。
のはぐちゃぐちゃだった。
猫に引っかき回された毛糸の玉のように、どこを引っ張っても切れず、引けば引くほどきつく絡まる。
3ヶ。
この数字が呪いのようにのを駆け巡る。
この3ヶ、修は1も社していなかった。
でも私は毎朝、彼がシャツを着てネクタイを締め、あの黒いビジネスバッグを持ってをるのを見ていた。
私がベッドに寄りかかってスマホをいじりながら声をかける。
「仕事くの?」
彼は玄関で靴を履きながら、振り返りもせずに答えていた。
「うんうん」
そして彼はいつも同じように尋ねてきた。
「夜は何がべたい?」
私は画面から目をさずに答えていた。
「あなたが作るものなら何でもいいわよ」
彼は優しく笑いながら提案した。
「じゃあ、魚蒸そうか。君の好きなブロッコリーの炒め物も」
こんな会話が、毎繰り返されていた。
彼は夜6ぴったりに帰宅し、エプロンをつけてキッチンにつ。
するとすぐに、フライパンにお玉が当たる音が響く。
彼は私がパクチーをべられないことを覚えている。
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私が理のには、たいに触れてはいけないことも覚えている。
私が夜まで残業して帰った、玄関の系のライトが必ずついていて、朝には必ず温かいスープが用されていることも。
私が仕事のストレスで彼に当たり散らしても、彼は静かに聞いてくれる。
私が鳴り終えるのを待ってから、温かいミルクを差ししてくれる。
「く寝なよ。体を壊さないようにね」
全てが、過3と全く変わらないように見えた。
いや、違う。
私は駐の壁に寄りかかり、必にいした。
違いはあった。
この3ヶ、彼は数が減っていた。
以なら、卓で会社でのくだらない来事を話したり、どのプログラマーがまたバグをしたとか、自分がしく研究しているアルゴリズムモデルがどれほど素らしいかといったことを話してくれた。
でもこの3ヶ、彼は何も話さなくなった。
私が問いかけても、い返事しか返ってこなかった。
「今はどうだった?」
彼は無表のまま答えた。
「まあまあだね」
私が仕事の捗を聞く。
「プロジェクトは順調?」
彼は線を落としたまま言った。
「相変わらずだよ」
彼はもう私と何も共しなくなった。
私ので、切のを見せなくなった。
らず、すねず、甘えず、愚痴もこぼさない。
彼はまるでプログラミングされたロボットのように、精密に完璧に「神崎はるかの夫」
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という役を演じていたのだ。
それなのに私はあろうことか、気が楽になったとじていた。
ついに彼が私を煩わせなくなった。
ついに空気を読めるようになった。
私が忙しいに、些細なことで邪魔をしてはいけないと理解したのだと。
ので、彼を褒めてさえいた。
「それでこそ男だわ。男たるもの、空気が読めないと」
でも、私は忘れていたのだ。
結婚したあの夜、ワインを半分空けて顔を赤らめた彼が、私のを握って言った言葉を。
「はるか、これから先、どんなことでもいい。嬉しいこともしいことも全部僕に話してほしい」
彼は私の目を真っ直ぐに見て言った。
「君ののただの背景にはなりたくないんだ。僕は君のパートナーになりたい」
私はその言葉を、きれいさっぱり忘れていた。
その、自分が「分かった」と答えたかどうかすら覚えていない。
私は会社の駐にち尽くし、自分のに向かってしばらくぼんやりとしていた。
そしてのドアをけ、乗り込み、エンジンをかけた。
どうやってまで運転したのか覚えていない。
信号をいくつか無し、クラクションを何度も鳴らされ、フードデリバリーの自転に追突しそうになったが、全く何もじなかった。
タイヤがマンション入りの減速帯をガタンと乗り越えて、ようやくに返った。
はすでに自宅のにまっていた。