"二十八年の遺言、追放された妻" 第13話
正の顔から、完全に気が失われていた。
翔太が息を呑む。
「親父……まさか……」
美咲さんが元をで覆った。
正は震える唇をかし、消え入りそうな声で囁いた。
「……委任状を……作ったんだ……」
「誰の委任状?」
答えは分かりきっていた。だが、私はあえて言わせた。
「……由美の、委任状だ……」
部の全員が、息を呑んで正を見つめた。
「私、そんな委任状、いてないわよ」
「……昔の実印と、印鑑証のコピーが……庫にあったから……代したんだ……」
印私文偽造。および同使。
派な、確な犯罪だった。
その瞬、私の胸のからりすら消え失せた。
残ったのは、を共にしてきたこの男に対する、底れぬれみと、絶対な軽蔑だけだった。
「それを、世では『犯罪』って言うのよ」
正はガタガタと震えながら、私のの裾に縋り付こうとした。
「ゆ、由美! 悪かった! 俺は……俺はただ、翔太たちに別のを買ってやりたくて……!」
私はそのをたく払い除け、バッグからスマートフォンを取りした。
そして、全員が見守るで、司法士の相馬先の番号をタップした。
スピーカーから呼びし音が鳴り、ワンコールで繋がる。
『はい、相馬です』
「相馬先。今、夫のから判いたしました。産という会社と、私の名義を偽造した委任状を使って、自宅の売却仮契約が結ばれていました。額は千万円です」
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話の向こうで、相馬先の息を呑む気配がした。そして、声のトーンが変した。
『……わかりました。即座に職権で産の法務部へ内容証を送り、無権代理および私文偽造による無効を通して、取引を完全止させます。相方の担当舗を教えていただけますか?』
私は正を見ろした。
「担当舗はどこ?」
正は震える声で支名をにした。
私はそれを相馬先に伝え、「よろしくお願いいたします」と告げて通話を切った。
正は子から崩れ落ち、畳のに両をついて項垂れていた。
翔太は自分の父親を、まるで汚物でも見るかのようなたい目で見つめていた。
「親父……最だよ。俺たちのためだなんて言うなよ……犯罪に俺たちを巻き込むなよ!」
美咲さんも涙を流しながら、夫の腕にすがりついて震えていた。
私は踵を返し、玄関へと向かった。
背から正の掠れた声が追いかけてくる。
「由美……待ってくれ……話しおう……!」
私は玄関ので靴を履き、ドアノブにをかけたところで、度だけ振り返った。
「、あなた、度でも私とまともに話しったことがあったかしら?」
正は何も言い返せなかった。
「次は、弁護士を通して話しましょう。婚届の準備をしておいてください」
私はドアをけ、ののへと踏みした。
背で閉まったドアのい属音が、私のの結婚活の幕引きの音だった。
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のる夜をタクシーで戻り、内のマンションのへと帰り着いたのは、夜の半を回った頃だった。
部のかりをつけ、ケトルでお湯を沸かして温かいお茶を淹れる。
ようやく訪れた静寂ので、私は呼吸を繰り返した。
そして、夜の過ぎ。
相馬先から、再び話が入った。
『さん、夜分遅くに申し訳ありません。産の法務部と直接交渉をい、先ほど、売却仮契約の即無条件解除のを取り付けました。偽造された委任状の原本も、にこちらへ引き渡されるはずになっております。これでおまいが勝に売却される配は完全に消滅しました』
「……ありがとうございました。本当にお世話になりました」
胸を撫でろした私に、しかし、相馬先はし苦しい調で言葉を続けた。
『ただ……さん。産会社の担当者から、し気になる、極めて過できない事を聴取いたしました』
私の胸の奥が、再びざわめいた。
「何でしょうか……?」
『ご主様が産会社に説していた売却理由についてです。ご主様は、息子様への宅購入資のためだと仰っていたそうですが……産会社側が調査した財務状況の裏付けは、まったく異なっておりました』
「どういうことですか?」
相馬先は、く息を吸い込んでから告げた。
『ご主様ご自の、額の借返済が目でした。