"二十八年の遺言、追放された妻" 第11話
いずれはこのを男である翔太に残すのが自然な流れだと、俺もってたしな。普通はそうだろう?」
「普通?」
私はさく笑った。
「名義が私なのに、何が普通なの?」
正の顔がピクリと引きつり、言葉に詰まった。
横から、息子の翔太が居悪そうにを乗りしてきた。
「母さん……俺、本当にらなかったんだよ。このが母さんの名義だったなんて……親父がずっと、自分のみたいに話してたから……」
「そうね。お父さんがそう言っていたものね」
「だから、俺もてっきり……」
翔太は線を落とし、を抱えた。
私は息子の横顔を静かに見つめた。
「翔太。責めるつもりはないけれど、つだけ教えて。あなた、私がこのをていくと聞いた、私がこれからどこでどうやって暮らすのか、度でも考えた?」
翔太は息を呑み、線をへと落とした。
沈黙。
度も考えていなかったのだ。母がどこかのアパートに追いやられようと、自分たちがこの広いをに入れられれば、それでよかったのだ。
隣に座っていた嫁の美咲さんが、いたたまれなくなったように俯き、赤い目でをいた。
「お母さん……本当に、申し訳ありませんでした……お父様が、お母様もすべて納得していると仰っていたので、私……」
「美咲さん、あなたにっているわけではないわ」
私は正へと線を戻した。
「納得していた? 私に言も聞いていないのに、どうして私が納得していることになるの?」
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正は顔を真っ赤にして呻いた。
「おなら……分かってくれるとったんだよ!」
「それ、納得じゃないわよ」
私の声は、氷のようにたかった。
「私なら、文句も言わずにするとっただけでしょ」
正が息を詰まらせ、言葉を失った。
その苦しい空気を破るように、義弟の修が苛たしげにを挟んできた。
「義姉さん、そうカリカリしなさんな。兄貴だって悪気があったわけじゃないんだから。族同士、丸く収めればいいじゃないですか」
私はゆっくりと、修の方へと顔を向けた。
「修さん。ちょうどよかったわ。あなたにお話ししなければならないことがあったの」
修が怪訝そうに眉をひそめた。
「俺に? 何ですか?」
「あなたが現、極駐として使っている隣ののことよ」
修の顔が、微かに変わった。
「誰に借りて、駐にしているの?」
修は兄の正に線をらせた。
「そりゃ……兄貴に『空いてるから自由に使っていいぞ』って言われたからですよ」
「そう。正さんに言われたのね」
私はバッグのファスナーをけ、司法士事務所で受け取ってきた登記事項証をテーブルの央へと滑らせた。
「あのはね、から、私の単独名義よ」
修が完全に凍りついた。
「え……?」
「あなたが駐として収益を得ているあのは、私のなの。賃貸借契約も結ばず、代も円も払わずに、無断で使用されていたのよ」
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修の妻が青ざめ、修の腕を引っ張った。修は額にや汗を浮かべ、狼狽えて声をずらせた。
「お、俺はらなかったんだ! 兄貴のだとばかりってたんだ!」
「らなかったのは分かっているわ。だから、あなたを今すぐ訴えるつもりはないの。ただ、今あのをどうするかは、所者である私が決めます」
正がたまらずテーブルを叩いてちがった。
「おい、由美! そこまでやるか! 修は俺の弟だぞ! 内にくらい融通してやって何が悪いんだ!」
私はややかに夫を見げた。
「また、の物を自分の物のように言っているわね。正さん、今、誰のの話をしているの?」
正はをパクパクとかしたが、何の反論もてこなかった。
私は再びバッグのにを入れ、もう枚の類を取りした。
黄く変した、の義父の直面のコピー。
それを、正の目のにピシャリと置いた。
「これ、見覚えがあるでしょう?」
正が線を落とした瞬、その顔からサーッと血の気が引いていった。
のように真っになった夫の唇が、ガチガチと震え始める。
「お義父さんの直の遺言覚よ。ここにはっきりといてあるわ。『正には、このもも切相続させない。理由は、度なる事業投資の失敗と無断借財の悪癖が改善されないため』って」
部のが、を打ったように静まり返った。