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"二十八年の遺言、追放された妻" 第6話

いや、忘れたのではない。都の悪い事実を記憶の底へと封印し、「の黒柱である俺の物だ」とい込んでいただけなのだ。

昨、夫は私の目を見て、はっきりと「俺のだろ」と言い放った。

私はその、あえて何も訂正しなかった。

なぜなら、もういいとったからだ。言ったところで言い訳と逆ギレが返ってくるだけだ。になれば、嫌でもいることになるのだから。

午番、私は母のマンションの管理を委託している元の産会社に話をかけた。

『はい、興産でございます』

「お世話になっております。以、母から相続したマンションのをお任せしていると申します」

『ああ、様! いつもお世話になっております。次の賃貸の募集の件でしょうか?』

「いえ、実はしばらくの、私自がその部にむことになりましたので、賃貸の募集は止していただけますでしょうか」

『承いたしました。ご自でお使いになるのですね。続きをめておきます』

私は受話器を握り直した。ほんのし躊躇いが胸をよぎったが、を決して言葉を継いだ。

「……それから、もうつ、ご相談があるのですが」

『はい、何でしょうか?』

「私の名義になっている、自宅のと建物の査定をお願いすることはできますでしょうか?」

話の向こうの担当者が、し驚いたように声を弾ませた。

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『ご自宅のご売却をお考えですか?』

私は窓のの景を見つめた。

「……まだ、確定ではありません。ただ、選択肢として持っておきたいのです」

言葉にしてからした瞬、胸の奥で何かがふわりと解き放たれ、自分でも気づかないうちにさく笑みがこぼれた。

売る。

私には、その選択肢があるのだ。

あの男が勝に息子に譲ると息巻いているあのを、所者である私の志つで、綺麗さっぱりに売り払ってしまう権利が、法に私にだけあるのだ。

夕方、正からメッセージアプリで方な連絡が入った。

『翔太たちと話した。部のリフォームをすることに決めたから、来から事業者が入る。おの荷物で残っているものがあるなら、週末までにまとめておけ』

画面に表示された文字を眺めながら、私は呆れ果てて息を吐いた。

い。本当に、い。

妻がをてったそのに、もうリフォームの段取りを息子と決めている。この男にとって、妻のなど、邪魔な具がつ片付いた程度の来事に過ぎないのだ。

私は画面をタップし、言だけ返信した。

『私の荷物を、勝に捨てないでください』

送信ボタンを押すと、すぐに既読がついた。

『分かった』

それだけだった。

翌朝、午。

まだベッドので目覚めのコーヒーをんでいた私のスマートフォンが、狂ったように鳴り響き始めた。

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画面には「正」の文字。

度、度、度。着信音が鳴り止んでは、再び鳴り始める。

私はめたコーヒーをすすり、度目のコールが鳴り響いたところで、静かに通話ボタンを押した。

「もしもし」

受話器の向こうから聞こえてきたのは、普段の尊な夫の声ではなかった。喉を掻きむしるような、荒く乱れた呼吸と、底れぬ混乱に満ちた声だった。

『ゆ……由美! お、今どこにいるんだ!?』

「母のマンションよ」

『マンション……? まだあんなとこ持ってたのかよ!』

「そうよ。それより、何の用?」

正の息遣いが、話越しに荒々しく響く。

『それよりって……お、の登記だ! 登記はどうなってるんだ!』

私はコーヒーカップをソーサーに戻した。

コトン、とい陶器の音が響く。

「……来たわね」

『何が来たんだよ! 説しろ! 今、翔太がリフォームローンの事審査のためにへって、法務局での登記簿謄本を取ってきたんだよ!』

話の向こうで、い沈黙が落ちた。

そして、掠れた、信じられないものを見たのい声が絞りされた。

『所者の欄が……おの名に、なってるんだよ……』

私は静かに、どこまでも穏やかに答えた。

「そうよ」

『そうよって……どういうことだ! 何かの違いだろ!?』

私は本気で呆れてしまった。

「違いって、どういうこと?」

『だって……ここは、俺のだろ!? 俺がローンを払ってきた、俺ののはずだろ!』

私はわず吹きしてしまった。

「ふふっ……昨も、そう言っていたわね」

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