"七年越しに再婚する私✕見知らぬ子と失踪夫" 第13話
「浩さん」
理さんが、氷のような声で言った。
「アパートの鍵を返して」
「……理?」
「あなたの荷物は、全部段ボールに詰めて実に送るわ。度と、私と悠斗のに現れないで」
「待てよ! 悠斗は俺の息子だぞ! 父親から引きす気か!」
「ええ、引きすわ」
理さんは迷いなく言い切った。
「自分の子どもを助けるために、もうの子どもを踏みにじるようなを、父親と呼ぶわけにはいかない。弁護士を通じて、養育費と親権の続きをめます。病院にも、あなたを悠斗の面会謝絶者として登録してもらいました」
「理! おい、理!」
警備員のが、浩の肩をく掴んだ。
抵抗しようともがき、喚き散らす男の姿は、滑稽なほどさく、惨めだった。
誰かに嵌められたわけでも、突然の運に見われたわけでもない。
自分がついたつの嘘と、自分自の底なしの勝さによって、男はつの庭から同に、永に追放されたのだ。
廊の向こうへ引きずられていく喚き声が消えたあと、面談には穏やかなが差し込んでいた。
理さんは私たちに向き直り、く、くをげた。
「真紀さん、結ちゃん……本当に、ごめんなさい。そして、ありがとう」
「理さん」
私はそのを取った。
「悠斗くんのこと、ながら応援しています。しっかり治して、元気にり回れるように祈っています」
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理さんは涙を拭い、力く頷いた。
母と母の、静かな約束。
そこにはもう、嘘も、奪いいも、憎悪もしなかった。
それから、ヶが過ぎた。
季節は初へと移り変わり、の青葉が眩しいを照り返していた。
私たちは、さな教会の控えにいた。
豪勢な披宴ではない。
誠さんの親しい友たちと、私の職の同僚、そして内だけを招いた、らずのさな再婚式。
姿見のにつ私のろで、結が真剣な顔をしてウェディングドレスの背のリボンをえてくれていた。
「お母さん、かないで。曲がっちゃう」
「ふふ、ごめんね」
鏡越しに映る結は、ヶよりもずっとびて見えた。
顔は良く、瞳にはききとしたが宿っている。
あの嵐のような々を乗り越えて、結は自分のでを向いて歩き始めていた。
「結」
私が呼ぶと、娘はを止めて鏡のの私を見た。
「あのね……お母さんが結婚すること、本当に寂しくない?」
結は瞬だけ驚いたように目を見き、それから柔らかく微笑んだ。
「ううん。全然」
結はドレスのレースをそっと撫でた。
「お母さんが誠さんと結婚しても、私のお母さんであることは変わらないでしょう? されなくなるわけじゃないって、ちゃんと分かってるもん」
しだけ、娘の声が震えた。
「……あのお父さんが悠斗くんを作ったからって、本当は、私を捨てる理由になんてならなかったのと同じようにね」
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胸の奥が、くなった。
「結……」
「私はね、お母さん」
結は私の肩にを置き、鏡のの私に向かってまっすぐに告げた。
「誰かの役につからされるんじゃないんだよね。ただきてて、そこにいるだけで、切にされていいんだよね。お母さんと誠さんが、それを教えてくれた」
涙がこぼれそうになるのを、私は必で堪えた。
せっかくのメイクが崩れてしまう。
「だからね、お母さん」
結が私のを取り、控えのい扉にをかけた。
扉の向こうからは、オルガンの柔らかな奏が微かに聞こえてくる。
バージンロードの先で、し緊張した面持ちの誠さんが待っているはずだった。
結はドアノブを回しながら、満面の笑みで私を振り返った。
ヶ、泣きながら「お父さんと約束しちゃった」と私を引き止めた女は、もうどこにもいなかった。
「お母さん、今はあなたの番だよ」
娘の力いが、私の背を優しく押してくれた。
かれた扉の向こうから、あたたかながり注ぐ。
私はもう、振り返らない。
に消えたを探すことも、誰かの嘘に怯えることもない。
私をしてくれるたちと共に、私は私のしいへ、しっかりと歩を踏みした。