"夫の死を告げられた夜、届いた私の熟睡写真" 第1話
「由紀さん、来なくていいから。あの子の顔、もう見せられるような状態じゃないの」
義母からの話は、曜の昼がり、何の触れもなくかかってきた。 夫の直が「週けまで阪へ張してくる」とスーツケースを引いてをてから、目のことだった。
交通事故。即。 受話器の向こうで義母が泣き崩れる声を聞きながら、私の体は文字通り直した。 膝から力が抜け、フローリングに崩れ落ちた。 受話器を握る指先から、体温が急速に奪われていく。
「……お義母さん、どういうことですか? 直さんが、どこで……どこの病院なんですか?」
喉が張り付いて、うまく声がない。 すぐに幹線に乗らなければ。着替えも何も持たず、今すぐ阪へ向かわなければ。 そう言ってちがろうとした私を、義母の鋭い声が遮った。
「来なくていいって言ってるでしょ! 型トラックとの衝突よ。全ひどく損傷してて……妻のあなたに見せられるような姿じゃないの。母親の私でさえ、直できなかったんだから」
「でも、妻は私です。私が確認しないわけには――」
「のことは、私と正彦さんで全部やるから」
話に割り込んできたのは、直の歳の兄、正彦だった。 医療器の輸入販売会社を経営している義兄の声は、弟をくした直とはえないほどたく、乾いていた。
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「由紀さんは京で待っていてくれればいい。遺体の引き取りも、警察との続きも、川の内だけで済ませる。でもないのに、ショックで倒れられたらこっちのが増えるだけだ。余計な詮索はせず、自宅を片付けて待ってろ」
「正彦さん、待ってください。どこの警察署ですか? 確認させて――」
ツーツー、と無質な切断音がリビングに響いた。
のが真っになった。 直がんだ? 、きな喧嘩もなく、穏やかに暮らしてきたあのが? 今朝だって「阪はがりそうだ」といメッセージが届いていたはずだった。 それが、なぜ。 なぜ私は、夫の最期にち会うことすら許されないのか。
管轄の警察署を聞きそうと、何度も義兄と義母の携帯にかけ直した。 けれど、度と呼びし音が鳴ることはなかった。源が切られていた。
夜の過ぎ。 インターホンが鳴り、玄関のドアスコープを覗くと、義母がでっていた。 喪ですらない、普段着のコートを着ていた。 ドアをけた瞬、義母は目もわせずにがり込み、リビングのダイニングテーブルのに、見覚えのある黒いブリーフケースを無造作に置いた。
夫が通勤や張のたびに用していた、革製の鞄だった。
「これ、直の遺品よ。荷物だけは先に警察から戻ってきたから」
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義母の声はく、どこか苛ちを含んでいた。 息子のを悼む母親の湿り気配が、なぜか希だった。
「これだけ、ですか? スマートフォンは? 直の携帯はどうなったんですか」
私が鞄にすがりつきながら尋ねると、義母の線がスッと宙を泳いだ。
「事故の衝撃で々になったって言われたわ。も全滅よ。……それより由紀さん、来週には親戚筋だけで簡単に密葬を済ませるから。あなたにはで取りを教えるわ。それまで、勝なはしないで頂戴。ご所にもまだ言わないで。世体があるんだから」
義母はそれだけをでまくしてると、お茶の杯もまず、逃げるようにマンションをてった。
残された私は、震えるで鞄のファスナーをけた。 に入っていたのは、夫のスケジュール帳、替えのワイシャツが枚、そして帳型のキーケース。 スマートフォンの破片すら、どこにも入っていなかった。
通夜も告別式も、遺体の確認すら拒絶されたまま。 寄り添った夫が、この世から消えたという事実だけが、たい塊となって胸に居座っていた。
眠れるはずがなかった。 寝のベッドに潜り込み、毛布をから被った。 の朝番で、阪府警の事故係に片っ端から話をかけよう。元の事故者がているはずだ。妻である私が分証を持っていけば、会わせてもらえないはずがない。
義母たちが何を隠しているのかは分からない。けれど、このまま引きがるわけにはいかない。