"五万円で捨てられた娘" 第14話
ちいさな背が誇らしい』
学の吹奏楽部のコンクール。 の卒業式。 の入学式。
歳、歳、歳。
すべての写真のに、母の文字が刻まれていた。 私が邪を引いた。 私が失恋して泣き腫らした。 私が正社員として初めてのボーナスで、母に桜のストールを贈った。 母がそのストールを首に巻き、誇らしそうに微笑んでいる写真。
そして、最のページ。
母がパーキンソン病を発症し、子に乗るようになってからの写真だった。 透析を終えた病院のロビーで、し疲れ切った顔の私と、母が並んで写っていた。 シャッターを押したのは、通りすがりの護師さんだったはずだ。
写真の裏に、震えるで、々しいインクの線が引かれていた。
――美咲へ。 本当のことを言えなくて、ごめんなさい。 あなたが傷つくのが怖くて、ずっと言えなかった。 でもね、美咲。 私のお腹を痛めて産んだ子じゃなくても、あなたは最初から、私の番の宝物でした。 私のオムツを替えてくれた、あなたのが震えていたのをっています。 けなくて、申し訳なくて、でも、あなたが娘でいてくれて、私は世界で番幸せな母親でした。
直の言葉に、を貸してはなりません。 あなたは誰に対しても、をげる必はありません。 私の娘として、堂々と、あなたのを歩みなさい。
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ありがとう、美咲。 私の、たったの、誇らしい娘。
畳のに、粒の涙がボタボタとこぼれ落ちた。
声をして泣いた。 声を押し殺すこともできず、アルバムを胸に抱きしめ、子供のように肩を震わせて泣いた。
血の繋がりが何だというのだろう。 戸籍の切れ枚にかれた活字が、何だというのだろう。
母は、、瞬たりとも私を疑わなかった。 私をし、私を見つめ、私のためにき、そして私のために武器を遺して逝ったのだ。 兄の放った「おは赤のだ」という呪いは、この冊のアルバムのに、っ端微に砕け散っていた。
私は、最初から悦子の娘だった。 兄に認められる必など、最初からミリもなかったのだ。
夕暮れ。 がの障子を赤く染める頃、私はようやく涙を拭った。
アルバムを切に鞄にしまい、ちがった。 片付けを終えた実の部は、驚くほど広々として、静まり返っていた。
私はスマートフォンを取りし、先の緑産ではなく、駅にある別の信頼できるの産仲介業者に話をかけた。
『はい、井のリハウスでございます』
「と申します」
私の声には、もう何の震えも迷いもなかった。
「実の売却、あるいは賃貸の相談をしたいのですが。……はい、私が単独の所者です。急いではいません。
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母が切にしていたなので、きちんと切に使ってくださる方に引き継ぎたいとっています」
通話を終え、画面を閉じた。
私はこのにしがみつくつもりはなかった。 このを守り抜いたのは、兄への復讐のためでも、産という資産に執着したからでもない。 母の尊厳と、私自のを守るためだった。
を処分して得た資があれば、私はもう度、自分のでちがることができる。 失ったキャリアを取り戻すために資格を取ることもできるし、しいで、私自のためのさな部を借りることだってできる。 母が遺してくれたのは、たい瓦と柱の塊ではなく、私が私としてき直すための「選択肢」だったのだ。
ブレーカーを落とし、すべての窓の鍵を閉めた。 玄関をて、しっかりとシリンダー錠を回す。
カチリ、と質な属音が響いた。
扉をて、振り返る。 夕暮れの空の、懐かしい実の根が静かに佇んでいた。 庭の茶が、鮮やかな赤いをつ、咲かせていた。
「お母さん、ってくるね」
さく呟き、私は駅へと続く坂を歩き始めた。
ポケットので、スマートフォンがく震えた。 画面を見ると、織からのメッセージだった。
『今の夜、何べる? あんたの好きなお鍋の準備して待ってるからく帰っておいでよ』
そのにもうつ、転職エージェントからの着通が表示されていた。 『類選考通過のおらせ(面接程のご案内)』。
たいのが通りを吹き抜けていく。 私はコートの襟をて、く、胸いっぱいに空気を吸い込んだ。
取りは、驚くほど軽かった。