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"認知症の父がベッド裏に隠したノート" 第17話

だが、何もない。 再び父を見げると、父はまだベッドのフレームを叩くのをやめない。

(じゃない……裏だ!)

私はスマートフォンの懐灯能を点灯させ、その眩しいをベッドの裏側、スプリングの網目とフレームの隙へと滑り込ませた。 そして、が当たった瞬、私は息を呑んだ。

製のベッドフレームの裏側に、頑丈な布ガムテープで、通の分い茶封筒がびっしりと貼り付けられていたのだ。

「お父さん……これね!?」

私がを伸ばし、バリバリと音をてないよう慎にガムテープを剥がして封筒を引き抜くと、ベッドのの父は、したようにさく、く頷いてくれた。

その刹だった。

ギシッ――。

階の階段の踊りあたりから、誰かが目を覚ましてを踏み鳴らしたような、微かな軋み音が静まり返ったのに響き渡ったのだ。

見つかったら、すべてが終わる――! 本能な警報が私ののでけたたましく鳴り響いた。 私は躊躇うことなくをびすと、に入れた茶封筒と、キッチンの器棚から回収した量の眠薬の薬袋をコートのポケットにねじ込み、玄関へとった。 靴の踵を踏み潰すようにして突っ掛け、鍵を素くけてへとびす。

ガチャンと閉まった玄関ドアの背から、階からドタバタと駆けりてくる音が微かに聞こえた気がした。

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真夜のの気は、の部着のままびした私の皮膚を、針で刺すように切り裂いた。凍えるような寒さだったが、私は振り返ることもなく、宅の暗い坂を目散に駆けりた。 通りを目指してり続ける私の体からは、寒さを忘れるほどのい汗が噴きしていた。

封筒のを確認する暇などなかった。けれど、父が命を削ってベッドの裏に隠し続けたその封筒のに、あの酷な族の罪を暴くための決定な真実が眠っていることを、私は毛疑っていなかった。 息を切らし、肺を焼きながら通りへと転がりた私は、青い防犯灯がる交番――警察署の域課の板を見つけるなり、迷うことなくそのガラス扉へとび込んだのだった。

真夜の交番に、着の着のままで血相を変えてび込んできた私の異様な姿に、当直の警察官たちは即座に事件の発を察してくれた。 私が差しした量の眠薬の束と、父がベッドの裏に隠していた茶封筒。 その封筒のから現れたのは、冊の使い古された学ノートだった。

それは、父が病気を疑い始めてから今に至るまで、震えるで毎密かにき綴っていた『闘病記』であり、同に『虐待の克な記録』だったのだ。

最初の数ページのった跡には、妻や娘たちの審な会話に対する疑問や、事のに異常な眠気に襲われることへの恐怖が理然と記されていた。

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そして、ページがむにつれて、文字は激しく乱れ、ミミズがうように崩れていきながらも、 『今も部からしてもらえなかった』 『喉が渇いたと訴えてもをくれない』 『美津子が「くねばいいのに」と言いながら薬を混ぜたスープを置いていった』 という々しい記録が、途切れ途切れに、けれど執のようにき連ねられていたのだ。

警察のきは迅速だった。 夜けとともに、管轄の警察署からパトカーが実へと急し、証拠隠滅を図ろうとしていた母・美津子、姉・織、次女・絵里のは、保護責任者遺棄致未遂、ならびに傷害の容疑でそので緊急逮捕された。

から担当の刑事から聞いた話では、錠をかけられた瞬、は反省の弁を述べるどころか、 「あとしで、あいつの保険と遺産がに入ったのに!」 「菜! おさえ余計な真似をしなければ!」 「あんたなんて、お父さんと血の繋がりすらないくせに! 遺産を独り占めする気なのよ!」 と、所に響き渡るような凄まじい悪罵を私に向けて喚き散らしていたそうだ。 その醜悪な断末魔を聞いた、私のから彼女たちに対する族としてのは、片の欠片も残らず完全に消滅した。

救された父は、極度の栄養失調と脱症状のため、直ちに警察病院の救急病棟へと緊急搬送された。

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