みかん小説
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"認知症の父がベッド裏に隠したノート" 第13話

玄関をけると、男の輝の脱ぎ散らかしたスニーカーが、なぜかずつ、計もにひっくり返って散乱していた。

「輝! あんた、自分の靴だけでなんでも玄関にてるのよ!」

散らばるだらけの靴を靴箱へと片付けながら、私は苦笑いを漏らした。京の実で渦巻いていたあのドス黒い悪や企みに比べれば、靴が散らかっていることなど、どれほど平でおしい悩みだろうか。悠也の笑顔と、智が淹れてくれた温かいお茶に包まれながら、私は「絶対に父をあの獄から救いさなければならない」という決を、胸の奥底で静かに研ぎ澄ませていた。

そして――再び私が京のを踏むことになったのは、それからヶが経過した、肌を刺すような寒が吹き荒れるのことだった。

父の病状は、あののから信じがたいスピードで悪化の途をたどっていた。 「もう限界よ! 刻もく施設に入れないと、こっちがノイローゼでんでしまうわ!」 受話器越しにヒステリックに喚きてる母の言葉を、私は最初、袈裟に騒ぎてて父を追いしたいだけなのだろうとややかに受け止めていた。 しかし――半ぶりに実の敷居を跨ぎ、居の介護ベッドに横たわる父の姿を目にした瞬、私はあまりの変わり果てよう息を呑み、言葉を失ってち尽くした。

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そこにいたのは、かつての威厳ある父の面を完全に失った、骨と皮ばかりに痩せ細ったの老だった。 頬はこけ、肌はにくすみ、何よりその瞳からは、あののに見せてくれた力い性のが完全に消え失せていた。呼びかけても虚ろな線を宙に彷徨わせるばかりで、の筋肉は目に見えて衰え、自力でちがることすら覚束ない状態にまで追い込まれていたのだ。 主治医からも「脳血管性の病変が急速にんでおり、運能のも著しい。そろそろ施設への入所を具体に検討すべき段階です」と告げられたという。

母と姉たちは、実からで分ほどれた、隣町の民介護施設に見学の予約を取り付けていた。 「いつでも見学にいらしてください」という施設の言葉を受け、翌の午、私たちは全員でその施設を訪れることになった。

い丘のに建つその施設は、築もない清潔な建物で、案内された個は向きのきな窓から柔らかな陽が差し込む、るく放な空だった。廊ですれ違うスタッフたちも、皆にこやかで親切そうに挨拶を返してくれる。 客観に見れば、申し分のない素らしい環境にえた。 だが――子に乗せられた父を取り囲み、「ここなら実からも適度な距だし、面会の実も減らせてちょうどいいわね!」

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「ええ、ここに決めましょうよ!」と、まるでしい別荘でもに入れたかのように嬉々としてはしゃぎう母と姉たちのろ姿を眺めているうちに、私の胸のにたい疑が渦を巻き始めた。

本当に、父をこのままこのたちの敷いたレールに乗せて、施設へ預けてしまっていいのだろうか。

「ねえ、ちょっと待ってよ」 私は堪えきれずにを挟んだ。 「まだ箇所目じゃない。もうしの施設も見学して、比較してから決めてもいいんじゃないの?」

私の慎な言葉に、母と姉たちは斉に眉を吊りげ、獲物に噛み付くような勢いで私を睨みつけてきた。

「何言ってるのよ! このご世、即入居できる特養や介護付きの個を探すのがどれだけ変か、あんたには分からないの!? 神戸でのほほんと暮らして、毎のオムツ替えも事の介助も切をさない部者のくせに、菜は余計なししないでよ!」

絵里の罵声に、織も腕を組んで追随する。 「そうよ! ちょうど部、急な退で空きがたって言うんだから、今すぐ続きしちゃいましょうよ! このチャンスを逃したら、あの獄のような自宅介護がいつまで続くか分からないのよ! ……あ、そうそう、入所と毎の差額ベッド代は、菜、あんたがしなさいよね! 体をかさないんだから、おくらいすのが当然でしょう!」

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