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"認知症の父がベッド裏に隠したノート" 第12話

受話器から聞こえる茜の焦燥を含んだ声に、私は単刀直入に切り込んだ。

「茜、昨はありがとう。単刀直入に聞くけど……あなたが気にしていたことって、うちの母とお姉ちゃんたちのことだよね?」

受話器の向こうが、瞬息を呑んで静まり返った。

『……菜、今、?』

「ううん、今、お父さんと緒にの喫茶にいるの。昨実に泊まって、全部お父さんのから話を聞いたわ」

『そうだったの……。私ね、菜に話すべきかどうか、ずっと迷ってたのよ。もし菜までお母さんたちと同じ穴の狢だったら、杜若さんが完全に孤して危ないんじゃないかって……』

「父の配をしてくれてありがとう。お父さんに代わるね」

私はスマートフォンを父へと渡した。父は端末を受け取ると、穏やかな声で「笹野さん、娘の友として気にかけてくれて本当にありがとう。菜は俺の方だから、して話してやってくれ」と直接伝えてくれた。 再びスマートフォンを受け取った私に、茜は声を潜め、戦慄すべき病院内での事実をかしてくれたのだ。

『……菜、私の勘違いなら座して謝るわ。でもね、お母さんたちの、護師の目から見ても異常すぎるのよ。病気のよりも、お母さんたちに何かされるんじゃないかって、私、ずっと気が気じゃなかったの』

「何かされるって……どういうこと?」

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私の背筋を、たい氷柱がすっと撫でろした。

『昨もそうだったけれど、お母さんたち、医師や護師に対する質問のピントが完全にズレてるのよ。「刻もく施設に入れたい」っていうのはまだ介護疲れの族によくあることだけど……いつも聞いてくるのは、「嚥障害はいつ頃から起きて、どういう事を詰まらせやすいのか」とか、「のふらつきはいつから始まって、階段から落ちる危険性はどれくらいあるのか」とか……。極めつけはね、お母さんとお姉さんの名義で、「介護疲れで夜眠れないから」って言って、力な眠薬を量に、それも期分処方してほしいって執拗に医師に求してきてるのよ』

を鈍器で殴られたような衝撃に、私は息を呑んだ。

『普通のご族なら、「どうすれば転倒を防げますか」「どうすればしでもくからご飯をべられますか」って聞いてくるの。でも、あのたちはまるで……「どうなれば事故に見せかけて命を落とすか」をにリサーチしているようにしか見えないのよ……!』

茜の告は、父が夜ににしたという「保険」の話と、戦慄するほどの精度で致していた。 私は全に鳥肌がつのを覚えながら、茜に父の覚の事実を伝え、もし病院側で何か審なきがあればすぐに私の携帯へ連絡を入れてほしいと固く約束を交わして話を切った。

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喫茶をて実への帰りを歩きながら、私は隣を歩く父のを握りしめ、何度も何度も言い聞かせた。

「お父さん、された事やみ物には絶対に気をつけて。怪しいとったら、絶対ににしちゃダメだからね」

父は無言で、けれど力く私のを握り返してくれた。

実の玄関をけると、居から母がぬっと顔をした。 「ずいぶんとい散歩だったじゃないの。どこまでってたのよ」 私は平静を装い、困ったような笑顔を作ってみせた。 「お父さん、途でが分からなくなっちゃって迷子になりかけちゃってさ。やっぱり、くにんでる私ときりじゃダメね」 私のその言葉に、母はあからさまにを鳴らした。 「だから言ったじゃないの。病気のせいなんだから、あんまりウロウロ連れ回さないでちょうだい。私たちだって、毎耐えるだけで精杯なんだからね」

そのの夕方、私は子供たちが待つ神戸へと戻るため、実をにした。 仏ので、再びぼんやりとした虚ろな表を作って庭の植を眺めている父の背に向けて、私は声をかけた。 「お父さん、私、帰るね。またいうちに来るからね」 父は振り返らなかった。けれど、その固く結ばれた背が、微かに、私にだけ分かるようにさくしたのを、私は見逃さなかった。

幹線に揺られて神戸の自宅へと戻ると、そこにはいつもの騒がしくも温かい常が待っていた。

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