"認知症の父がベッド裏に隠したノート" 第5話
そこには、さな黒いホクロがちょこんと乗っていた。
「私よ、私! の、同じクラスで隣の席だった笹野茜! 覚えてない?」
「……笹野、茜……?」
元に浮かぶその特徴なホクロと、の奥に残っていたるい声のトーンが、以もの埃を被った記憶の扉を勢いよく押しけた。セーラーを着て、教の窓際で緒に購買の焼きそばパンを頬張っていた女の笑顔が、目のの凛々しい護師の顔と完璧になりう。
「あ……茜!? うそ、茜なの!?」
「そうよ! もう、びっくりなんだけど!」
「私だってびっくりよ! こんなところで会うなんて!」
信じられない偶然の再会に、私たちはわず子からちがり、を取りわんばかりにしてさく歓声をげた。茜は周囲の患者の線を気にして元をで覆いながら、楽しそうに目を細めた。
「づてにね、菜が関にお嫁にったっていう話は聞いてたのよ。神戸だっけ?」
「そうなの。今はね、父の検査結果を聞くために、神戸からはるばる幹線でやってきたのよ」
そう言って私が元に置いたキャリーケースを軽くポンと叩くと、茜は何かをいしたようにハッと息を呑み、ぽんと自分のを打った。
「あー……そうか! 杜若信助さん! あの患者さん、菜のお父さんだったの!? 珍しい名字だからどこかで聞いたことがあるとってたんだけど、まさか菜のお父さんだとは気づかなかったわ!」
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「えっ、ってるの?」
「うん、だって私、この病院の脳神経内科の来と病棟を担当してる護師だもん。お父さんの検査のも、私、バイタル測ったり検査へ案内したりしたんだよ」
「そうだったんだ……! ありがとう、茜。護師さんになってたんだね。こんな派な病院でバリバリ働いてるなんて、全然らなかったよ」
私がからの敬を込めて微笑むと、茜はどこか照れくさそうに肩をすくめてみせた。
「まあね。うちは昔から貧乏だったでしょ? 母が『女もに職をつけなきゃきていけない』ってうるさくてさ。をたは迷わず護学に学したのよ。おかげさまで、この本でなんとかでべていけてるけどね」
屈託のない笑顔でそう語る茜の姿を見つめながら、私は懐かしい青代のコマにがじんわりと温かくなるのをじていた。 だが――次の瞬、茜の表からふっと笑みが消えった。彼女は周囲をチラリと見回すと、まるで現実のたいに引き戻されたかのような、どこか刻で探るような差しを私へと向けてきたのだ。
「……ねえ、菜。あんたって、普段どれくらいの頻度で実に帰ってるの?」
突然の奇妙な質問に、私は首を傾げた。
「え? お盆と正くらいかな……に回か回だよ。それがどうしたの?」
「うーん……そっか。
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いや、ちょっと聞いてみただけ」
茜はあからさまに元を濁し、何かを呑み込むように線を逸らした。そして、首のナースウォッチに目を落とすと、慌ただしくを翻した。
「あ、ごめん、私もうナースステーションに戻らなきゃ! またで、診察での結果報告のにね!」
にっていく茜のろ姿を、私はただ呆然と見送ることしかできなかった。 何だったのだろう、今のは――。 なぜ彼女は、私の実への帰省頻度などを尋ねてきたのか。 胸の奥に、言葉では言い表せないざらついた澱のような違が残された。父の病状について、何か医師から直接聞くにらされていない恐ろしい事実でもあるのだろうか。そう考えた瞬、急激に臓の鼓が速くなり、これから聞かされるはずの検査結果が、途方もなく恐ろしいものへと変貌していくのをじていた。
茜の解な態度に考を巡らせながら待の子でじっと座っていると、自ドアがき、エントランスの方から聞き慣れた複数の音がづいてくるのが見えた。 母の美津子、そしての姉――女の織と次女の絵里が、父の信助を囲むようにして歩いてくる。
「菜! 久しぶりね。くからわざわざ来てもらって悪かったわね」
母と姉たちが々に声をかけながら私の元へと歩み寄ってきた。
私はちがり、「ううん、丈夫よ」