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"妻の失踪から90日、誰かが場所代を払っている" 第17話

まるで、仕事の打ちわせにやって来た社ののような、底れない静けさを纏っていた。

私は反射にちがり、腰を折った。

「……里奈」

妻は会釈を返し、私の向かいの席に静かに腰をろした。 バッグを膝のに置き、員が運んできたおにさくをつける。

「……元気そうね、俊介さん」

最初にをいたのは、妻の方だった。 その声の落ち着きに、私の胸の奥がチクリと痛んだ。

「元気……じゃないよ。でも、きてる」

私は喉の奥から声を絞りし、テーブルのに封筒を滑らせた。

「これ……信とのと、直の続きの報告だ。直は先週、起訴された。俺がサインしてしまった分の借は、俺個の料から毎返済していくことでした。おに……おの実や財産に、迷惑が及ぶことは絶対にない」

妻は封筒に線を落としたが、を取りして読もうとはしなかった。 ただ、細い指先で封筒の角をそっと撫でた。

「恵美から聞いたわ。警察にったのね」

「ああ」

「お義母さん、鳴り込んできたでしょう」

「……着信拒否にした。もう、度と会うことはないとう」

妻の瞳が、わずかに揺れた。 だが、同のはなかった。 ただ、い国の来事を聞いているかのように、静かに頷いただけだった。

「そう」

沈黙が落ちた。 ラウンジのスピーカーから、静かなピアノの曲が流れている。

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港をき交う貨物の汽笛が、ガラス越しにく響いた。

私は両を膝ので固く握りしめた。 聞かなければならないことが、ほどあった。 言わなければならない謝罪が、喉元までせりがっていた。

「里奈」

「ん?」

「あの夜……いなくなるの晩のことだ」

妻の線が、私の目に戻ってきた。

「お、リビングのカーテンを買いにこうって言ったよな。……遮の、しいやつにしようって」

妻の眉が、微かにいた。

「どうして、あの話をしたんだ? もうていく準備を全部終えていたはずなのに。……どうして俺に、あんな常の約束をしたんだ?」

妻はしばらくの、窓ののを見つめていた。 の気配を含んだ潮が、テラスの植栽を揺らしている。

やがて、妻は静かにをいた。

「……試したのよ」

浦恵美から聞いた言葉と、まったく同じ言葉だった。 だが、妻のの声で聞くその響きは、私の内臓を直接素で掴まれるような破壊力を持っていた。

「あの、私の元には、信からの通と、直さんからの脅迫メールの履歴が全部揃ってた。警察にくか、弁護士に駆け込むか、それともすべてを捨てて逃げるか……のが破裂しそうだった」

妻の声には、震えつなかった。 を極限まで削ぎ落とした、事実の陳列。

「でもね、緒に暮らしてきたのよ。あなたと。……朝起きて、ご飯をべて、のない話をして。

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その活のすべてが、嘘だったとはいたくなかった」

妻の線が、私の瞳の奥を射抜いた。

「だから、最につだけ、さな嘘をついてみたの。カーテンを見にこうって。もしあなたが、『そうだね、今度の週末こう』って言ってくれたら……その買い物の途で、ファミレスにでも入って、全部打ちけようとってた。『直さんに脅されてる、助けてほしい、で警察にこう』って」

息ができない。 喉の奥がヒリヒリと焼けるように痛い。

「でも、あなた何て言った?」

妻の元に、乾いた、しい笑みが浮かんだ。

「『今度の週末は直のの棚卸しを伝うから、カーテンは来でいいだろ』って。私の顔すら見ずに、スマホで直とLINEしながら笑ってた」

を鈍器で殴られたような衝撃だった。

「あの瞬ね、私ので、何かが完全に終わったの」

妻は自分の両を胸のでねた。

「俊介さんは、悪じゃないわ。浮気もしないし、暴力を振るうわけでもない。……でもね、あなたはいつだって、私よりも直さんを選んできた。私がどれだけ傷ついても、どれだけ怯えても、『族だから』『あいつは器用なだけだから』って、私の痛みを踏み台にして、自分の『優しいお兄ちゃん』のを守り続けてきた」

言も、言い返せなかった。 妻の言葉のすべてが、私の醜い本質を、科術のメスのように正確に切り裂いていた。

「私が怖かったのはね、直さんの暴力や借じゃないの。

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