"妻の失踪から90日、誰かが場所代を払っている" 第16話
捜査員は淡々と調を取り、最に言った。
「お兄さん、実の弟さんを刑事告訴するとなると、親族関係は完全に壊れますよ。取りげはききません」
「最初から、壊れていたんです」
私は乾いた唇で答えた。
「私が『仲の良い族』のふりをして、傷にフタをしていただけでした」
警察をた、央信用庫の本へ向かい、融資第課の柿沼課と対峙した。 私が警察に告訴状を提した受領証のコピーを提示し、自分がサインした百万円の保証債務について、正式な返済計画の策定を申し入れた。
柿沼課は受領証を瞥し、それまで貼り付けていた徹な仮面を崩して、微かに息を呑んだ。
「……本気で、弟御を法廷にたせるおつもりですか」
「ええ。ですが、私がサインした過失分の責任から逃げるつもりはありません。私の退職の担保提供、ならびに毎の与からの引きで返済計画を組んでください。その代わり、直が勝に追加した分の請求は、切拒否します」
柿沼課は類を丁寧に揃え、静かにちがってをげた。
「承いたしました。法務部と協議の、正式な返済を作成いたします」
すべての続きを終えてにた、空はすでに墨に染まっていた。 ポケットので、スマートフォンが震えた。 母からの着信。 留守番話に切り替わると、震える声が録音されていた。
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『あんたなんか産まなきゃよかった。父親がきてたら、あんたを勘当してたよ。もう度と、実の敷居を跨ぐんじゃないよ』
私は留守番話を消し、母の番号を着信拒否に設定した。
胃の奥が雑巾のように絞られる痛みがった。 だが、議と涙はなかった。 、私を呪縛し続けてきた「男」という名の檻の扉が、音をてて砕け散った覚だけがあった。
*
それからの週は、涛のように過ぎった。
直の古部品販売には警察の宅捜索が入り、帳簿類の偽造と無許営業の実態が次々とるみにた。 直は警察に任同され、最終には詐欺と私文偽造の容疑で逮捕された。 舗は差し押さえられ、破産続きが始された。
私は自分のを売却した。 妻がいなくなった広いマンションを引き払い、区の端にある築の狭いワンルームアパートへ引っ越した。 余計な具はすべて処分した。 リビングの、買い替えるはずだった古いカーテンも、粗ゴミとして捨てた。
毎の与の分のが、信への返済に消えていく。 贅沢など何つできない、乾き切った活。 だが、毎晩アパートの万に倒れ込む、私の呼吸は、の結婚活のどの瞬よりもかった。
の旬。 の曜の朝、見らぬ番号からショートメッセージが届いた。
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『浦です。 里奈が、度だけあなたに会うと言っています。 の、千葉みなと駅のくの喫茶です。 所の詳細は以に記します。 なお、復縁や同居の交渉をする図は切ありません。 それを承できるのみ、お越しください』
画面を見つめたまま、私は数分、息を止めていた。
震える指で、ただ言だけ返信した。
『分かりました。ありがとうございます』
*
翌の午半。 私は約束の所である、千葉港に面した古いホテルの階にあるラウンジにいた。
きなガラス窓の向こうに、晩の京湾が広がっている。 の面が、傾きかけた午のを浴びて鈍くっていた。
スーツではなく、黒のニットになコートを着てった。 には、信との返済のコピーと、直の刑事続きに関する弁護士からの報告を入れたい封筒。
分。 自ドアがき、カランとさなベルが鳴った。
線を向けた瞬、呼吸が止まった。
妻だった。
か半ぶりに見るその姿は、私の記憶のにある妻よりも、し痩せて見えた。 髪は肩のでく切り揃えられ、化粧気のない横顔。 着ているのは、見覚えのないベージュのトレンチコートだった。
妻は線を巡らせ、私を見つけると、歩みを止めることなくまっすぐに歩いてきた。 怯えも、りも、取り乱した様子もなかった。