"妻の失踪から90日、誰かが場所代を払っている" 第12話
臓がきくねた。
「里奈が……ここに来たんですか?」
「ええ。ご本様がおで。非常に憔悴されたご様子でしたが、持参された資料をつつ確認され、連帯保証契約の効性について法な観点から細かく質問されていきました」
柿沼課が、初めてわずかに線をらげた。
「奥様は、ご主様を守ろうと必でいらっしゃいましたよ。『夫は騙されたんです、夫に返済義務が及ばない方法はありませんか』と、何度もをげられていました」
胸が、鋭利な刃物で抉られるように痛んだ。
「ですが、私どもの回答は今申しげた通りです。『ご主様ご自が警察に被害届をさない限り、融関としては連帯保証であるご主様に請求せざるを得ない』と。奥様はそれを聞いて、真っ青な顔でお帰りになりました」
妻は、でここへ来ていたのだ。 私が「直を疑うな」と鳴りつけていたあの期に。 たったでこのたい応接に座り、をげ、私の無責任なサインの尻拭いをしようとしていた。
「藤井様。直様の会社はすでに営業実態を失いつつあり、担保価値もありません。今末までに延滞利息を含む全額の返済計画が提示されない、私どもは保証である藤井様のご自宅産、ならびに与の差し押さえ続きに入らざるを得ません」
広告
柿沼課がちがった。 それは、対話の終を告げる図だった。
信用庫をると、のたいれの空が広がっていた。 層ビルのを吹き抜けるビルが、汗ばんだ首筋を容赦なくやしていく。
私はポケットからスマートフォンを取りした。 震えるで、昨夜妻の類のから見つけした、もうつの連絡先を探す。
妻のきの付箋にかれていた、唯の方の名。 『浦 恵美(みうら えみ)』 弁護士法オオトモ法律事務所 パラリーガル。
妻の、古くからの友。
通話ボタンを押した。 今度は、逃げるわけにはいかなかった。
*
ツ駅くの、古びた喫茶だった。 昼休みのをし過ぎた内には、クラシック音楽がさく流れている。
奥のボックス席に座っていたのは、仕ての良いグレーのパンツスーツを着た、ショートカットの女性だった。 メイクはいが、理な細い目が、入ってきた私を射抜くように捉えた。
「藤井俊介さんですね」
浦恵美はちがりもせず、ややかに言った。 席に着くよう促すつきすら、事務で無質だった。
私が腰をろすと、彼女はアイスコーヒーのグラスにをつけ、単刀直入に切りした。
「里奈の居所を聞きに来たのなら、の無駄ですからお引き取りください。私は何も話しません」
広告
「……居所を聞くつもりはありません」
私は喉の奥から、絞りすように言った。 嘘ではなかった。 今の私には、妻のに顔をす資格など微もないことくらい、痛いほど分かっていた。
「ただ……妻が、どんないでをたのかを、りたいんです。信にってきました。妻がで相談にっていたことも聞きました。……私は、何もらなかったんです」
「らなかった?」
浦恵美の元が、侮蔑を孕んで歪んだ。
「らないはずがないでしょう。里奈は、あなたに何回も言ったはずです。『直さんの借がおかしい』『調べてほしい』って。それを全部、あなたが握りつぶしたんじゃないですか」
彼女はバッグから、分い帳とタブレット端末を取りし、テーブルのに置いた。 画面をタップし、あるフォルダをく。 そこには、妻と私の過のメッセージのやり取り、そして妻が記録していた記のデータが几帳面に保されていた。
「これを見なさいよ」
突きつけられた画面を見る。
妻の記録: 『。 俊介さんに、信からの通について話した。 「直は今頑張ってるんだから、を差すようなことを言うな」と嫌になられた。 そのの夜、直さんから私の携帯に着信。 「義姉さん、兄貴に余計なこと言っただろ。俺たちの邪魔すんなよ」とい声で脅された。
俊介さんが、直さんに話したのだ。 どうして? どうして私を守ってくれないの?』
『。 自宅のポストに、差の封筒。