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"妻の失踪から90日、誰かが場所代を払っている" 第6話

沼津はすぐ隣のだ。 妻は学を卒業してから京の会計事務所に就職するまで、元で数、信用庫の請け会社で事務員をしていた。

妻が残していった類のを漁った。 リビングの引きし、賀状の束、結婚式の芳名帳。 祈るようないで、過の所録をめくる。

あった。 の結婚式の芳名帳。 婦側、主賓・友の欄に、その名が記されていた。

『倉 昌子 静岡県沼津――』 肩きの欄には、妻の几帳面な字で『元職先輩』と鉛でさくメモされていた。

妻の、かつての先輩。 計を見る。夜。 さすがにこのに話をかけることはできない。 私はメモ用にその固定話の番号をき殴り、胸ポケットにねじ込んだ。

翌朝、午を回ると同に、私は会社のトイレの個に駆け込み、その番号をダイヤルした。

コール音が回鳴り、カチャリと受話器ががる音がした。

『はい、倉ですが』

落ち着いた、代半ばから代とわれる女性の声だった。

「あ……突然のお話、申し訳ありません。私、藤井里奈の夫の、俊介と申します」

受話器の向こうが、ピタリと静まり返った。 話の呼吸音が、瞬で警戒のを帯びたのが分かった。

「……藤井さんの、ご主ですか」

声の温度が、気に氷点までがっていた。

「はい。あの、突然で本当に申し訳ありません。

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実は昨、千葉の駐で、倉さんの名義になっているシルバーの産のセダンを見つけまして……」

『……そこまで辿り着いたのね』

倉昌子のから漏れたのは、驚きではなく、いため息だった。

「倉さん、お願いです。妻が今どこにいるのか、ごなんですよね? 妻は無事なんですか? か、警察も私も必で探していて――」

『俊介さん』

い調で、私の言葉が遮られた。

『あなた、自分が何をしたのか、本当に何も分かってらっしゃらないのね』

を殴られたような衝撃だった。

「え……? 私が、ですか……?」

『里奈さんはね、あなたから逃げたんですよ』

個トイレの狭い空が、急激に狭まったように息苦しくなった。

「逃げた……? なぜです、私は里奈を傷つけたことなんて度もありません! 喧嘩だって、ほとんどしたことがなくて――」

『それが番の罪だって、どうして気づかないんですか』

受話器の向こうの声は、震えるほどのりを孕んでいた。

『あのはね、私が以乗っていた古いを廃にする予定だったのを、里奈さんに頼まれて貸したんです。の初めでした。「どうしてもで荷物を運びして、誰にも見つからない所にを隠さなきゃいけない。主のを使えば、すぐに追いつかれてしまうから」って、泣きながら話をかけてきたんですよ』

「を隠す……? 私からですか? なぜ――」

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『違います! あなたの弟さんからよ!』

の奥で、鳴が轟いたような錯覚に囚われた。

弟。 直。

『弟さんが、何度も何度も彼女の職や、休の買いし先に現れて脅していたのを、あなた本当にらなかったんですか? 里奈さんは何度もあなたに相談したはずです! 「弟さんの様子がおかしい、おのことで何か隠している、調べてほしい」って! それをあなたは何て言いました?』

倉昌子の糾弾が、私の鼓膜を容赦なく叩き割る。

『「直はそんな奴じゃない」「あいつは今苦しいんだから、族のおが信じてやらなきゃダメだ」……そうやって、彼女が必で集めた証拠や違を、全部そのまま弟さんに横流ししたでしょう! あなたが弟にチクるたびに、里奈さんがどれだけ追い詰められていたか、度でも考えたことがあるんですか!』

全の血の気が、の裏から抜けていった。

……私が? 私が、里奈の訴えを、直に横流しした……?

記憶の底のが、急速に巻きげられていく。

失踪する週。 夜、ダイニングテーブルで、里奈が真っ青な顔をして私に差ししてきた、通の封。

『俊介さん、これ見て。信用庫から届いた通。直さんの会社の融資の更類だけど……どうしてここに、あなたの名と実印が押してあるの? あなた、またしい連帯保証になったの?』

あの、私は何と答えたか。

『まさか、そんなわけないだろ。直がの借入の類を理しただけだよ。里奈、おは昔から直に対して警戒しすぎなんだよ。

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