"消えた新郎と「探すな」と言った花嫁" 第16話
真の絨毯を歩き、宴会のい扉を押しけて、へと歩きした。
それから、ヶが過ぎた。
の初めのが、ベランダのいカーテンを揺らしている。
品川駅から駅れた、古い私鉄沿線の宅。 築の、さな2DKのアパート。 当たりだけが無駄に良いそのリビングが、私と悠のしいまいだった。
事件の、藤堂修平は業務過失傷害と法監禁の容疑で送検された。 父が裏で渡していた百万円のも警察のるところとなり、相沢商事はメインバンクからの信用を失い、父は代表権を返して会職からも退いた。 静岡の実からは、に度、事務な弁護士からの類が届くだけだ。 父からの個な連絡は、あの以来、度もない。
「美紀、お茶淹れたよ」
キッチンから、マグカップをつ持った悠が歩いてきた。
のえ際からのろにかけて、まだ赤みの残る術痕がくっている。 けれど、歩く取りはもうしっかりしていた。 遺症もなく、先から設計事務所への復職も果たしている。
「ありがとう」
差しされたいほうじ茶を受け取る。 カップからちる湯気が、午の差しに溶けていく。
悠は私の隣に腰掛け、ローテーブルのに広げられた類の束に目を落とした。
百万円の式キャンセル料と、業者への違約の精算。
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毎、お互いの料からしずつ分割で返済を続けている。 完済までには、あとはかかる計算だった。 贅沢はできないし、欲しいもすぐには買えない。
それでも、呼吸が苦しくなる夜は、もう度も訪れていなかった。
「……ねえ、美紀」
悠がマグカップに両を添えたまま、いたずらっぽく笑った。
「結婚式、やっぱり挙げたい?」
私は吹きしそうになった。
「あんな目に遭ったのに、まだそんなこと言ってるの?」
「いや、ほら。今度はさ」
悠は窓の、どこまでも青いの空を見げた。
「招待客は、本当に呼びたいだけ。真帆と、事務所の仲と、君の友達だけでさ。か、くらいでいい。会費制で、所のさなイタリアンでやるんだ」
「引き物もなし?」
「なし。美いパスタって、ワインんで、笑って解散」
悠の穏やかな声を聞きながら、私は胸の奥がじんわりと温かくなるのをじていた。
「……うん。いいね、それ」
「いつにする?」
「そうね」
私はちがり、器棚の引きしから、あの持ち帰った封筒を取りした。
に入っていたのは、箔で縁取られた、あの豪奢な披宴の表だった。 表には、父が誇らしげに印刷させた文字が並んでいる。 【相沢・瀬 絆の継承】
私はそれを両で掴み、迷うことなく真んから真っつに引き裂いた。 ビリビリと乾いた音がリビングに響く。
つに裂き、つに裂いて、元のゴミ箱へ放り込んだ。
そして、元に残った無のメモ用を枚、テーブルのに置いた。
ペンのキャップをし、黒いインクで、丁寧に文字をらせる。
『私たちの結婚式』
付の欄は、空欄のままにした。
「いつにするかは、私たちが本当に挙げたくなったに、で決めよう」
顔をげると、悠が嬉しそうに目を細めて笑っていた。
け放たれた窓から、柔らかいが吹き抜けていく。 誰の指図も受けない、私たちのしい季節が、そこから始まろうとしていた。