"存在しない306号室" 第2話
「この『306』とかれた表の角印を見て」
の肩に押された赤い朱肉。 『野県○○等学 印』。
偽物ではない。印の欠けまで、完全に致している。
「旅会社に昨夜、個に問いわせたの。当の営業担当はもう定退職していたけれど、控えの台帳を調べてくれたわ。……修学旅の資料には、種類あったそうよ。徒や保護者に渡す『向け』のものと、引率教員と添乗員だけが持っていた『内部管理用』」
「内部管理用……」
「ええ。この306とかれた表は、現の教員だけが共していた控えよ」
背筋にたいものがった。
の徒たちの部割りは、徒用の表と文字も違わない。 変わっているのは、失踪したの欄だけ。 全員が、元々の部から消され、架空の部番号『306』に本の線でまとめられている。
誰かが、故にやったのだ。 をひとつの所に集めるために。
「田辺先には……連絡したんですか?」
私の問いに、藤原先の顔からさっと血の気が引いた。
田辺也。当の副担任。 部割りの取りまとめや夜の点呼、緊急連絡をに引き受けていた男だ。 失踪直の夜、階の廊で姉たちと揉めていた、最の目撃者。
「話したわ。昨の夜、をけてすぐに」 藤原先の声が、微かに震え始める。 「田辺先、まだで非常勤講師を続けているの。話にた瞬、ひどく苛っていて……私が『昔の部割り表が届いた』と言っただけで、呼吸が止まったのよ」
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「……なんて言ったんですか」
「『警察にはすな』って」
喫茶の空気が、凍りついたようにくなった。
「『警察には絶対に持っていくな』って、鳴られたの。私がどうしてかと聞き返したら……あの、話の向こうで叫んだわ」
藤原先が、唇を噛みしめる。
『あいつらは、306号で寝るために集められたんじゃない!』
それだけ叫んで、話は方に切られたという。
ので、パズルのピースが激しくぶつかりう。 寝るためではないとしたら、何のために集められたのか。 なぜ、しないはずの部番号が、教員用の台帳にだけ公然と記載されていたのか。
「宮本さん、私ね……ずっと自分を責めてきたの」 藤原先が、テーブルに額を擦りつけるようにしてさくなった。 「あの夜、をした別の徒の病にかかりきりで、田辺先に点呼を全部任せてしまった。あのが『徒たちが勝に抜けしたようだ』と言ったのを、疑いもせずに信じてしまった。でも、もし……もし最初から、の都で別の所に集められていたのだとしたら……」
「先」 私はちがった。 「、田辺先のところへきます。所沢の自宅ですよね。逃げられるに、直接会って聞くしかない」
帳に所をき留めながら、私は自分の指先がたく張っているのをじていた。 、ずっと止まっていた計の針が、狂ったような速度で軋みながら回り始めている。
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けれど翌朝、事態は私たちの元をすり抜けるようにして、最悪の方向へと転がり落ちた。
朝の分。 駅へ向かう途の交差点で、藤原先からの着信が入った。 に当てたスマホから聞こえてきたのは、言葉にならない嗚咽だった。
「先? どうしたんですか、今向かってます」
「田辺先が……」 息が吸えないのか、激しい過呼吸の音が混ざる。 「今朝、自宅マンションの階段から落ちたって……警察から、私のところに話があって」
「……え?」
「をく打って、識の体で……今、救急救命センターに……」
アスファルトの面が、ぐらりと揺れた気がした。 青信号を渡る々の音が、急にくなる。
「落ちたって……事故ですか? それとも」
「わからない。何もわからないの。でも、警察のが……私の着信履歴を見て話をかけてきた警察のが、言ったのよ」
藤原先の震える声が、スマホのスピーカーを通じての奥に突き刺さった。
「田辺先のスマホに、未送信のメールが件だけ残されていたって」
喉が詰まって、声がない。
「宛先は入っていなかったそうよ。今朝の分にき保された、たったの文章……」
『あの夜、俺が緒にくべきだった』
指から力が抜け、スマホを取り落としそうになった。
緒にくべきだった。 どこへ? 誰と?