"母が消える直前の電話は、警察宛てだった" 第12話
野寺の目が、血った獣のように見かれた。
「隆志のパソコンのパスワード……復号キーを、おが持っているのか」
「っています。父がくなる直、私の誕のノートの裏表にき残していました」 私はトートバッグをに突きした。
「母を解放してください。そうすれば、キーを教えます。警察には何も言いません。と同じように、私たちは全部忘れてをていきます」
野寺の元が、歪んだ弧を描いた。 喉の奥から、乾いた笑いが漏れす。
「……忘れる? 忘れられるはずがないだろう」 男はナイフの切っ先を、私の喉元へと向けた。
「隆志もそうだった。『会社の裏作りに加担できない』『世に公表する』と正義を振りかざしおって。あの男を黙らせるために、私がどれだけのを使い、どれだけのを被ったとっている! あいつがんだも、恵子がどこかに控えを持っているんじゃないかと、……、私は毎、おたちの顔を窺いながらきてきたんだ!」
化けの皮が、完全に剥がれ落ちていた。 そこにあるのは、代で会社を築きげた名士の姿ではない。 自らが犯した罪のに怯え、世体と保に狂った、れな老の残骸だった。
「おたちがきている限り、私はできないんだよ。美奈ちゃん。……キーの番号を言え。
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言わなければ、まず母親の指を本ずつ折る」
野寺が母の方へ歩踏みした。
そのだった。
く、漆黒の赤面の夜空を切り裂いて、甲いサイレンの音が響いた。
つではない。 つ、つ。 を駆けがってくる、何台もの緊急両の子音。
野寺の体が、直した。
「……貴様、警察を呼んだのか」
「分、経ちました」 私は歩も引かず、男の目を睨みつけた。
「元警部だけじゃない。県警の捜査課の当直にも、データは全て送信されました。病院のカルテも、写真館の『08号』の復元データも、の証言も、全部です!」
「黙れ!」
野寺が叫び、ナイフを振りげた。 母の鳴が響く。
私は逃げなかった。 元にあったトートバッグを、男の顔面目掛けて力任せに投げつけた。
いノートとCD—Rの角が男の梁を直撃する。 野寺が体制を崩し、ナイフが空を切ってコンクリートのに甲い音をてて落ちた。
直、倉庫の正面扉が凄まじい衝撃音と共に蹴破られた。
「警察だ! くな!」
鋭い号。 暗を瞬で昼に変える、何条もの烈なサーチライトの。 防弾ベストを着込んだ男たちが崩れ込んできた。
「……! 貴様、引退したはずのが、何の真似だ!」 に転がった野寺が、まみれになりながら喚き散らす。
その央からみてきたのは、息を切らし、鬼のような形相をした元警部だった。
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「野寺誠。……遅れたが、今度こそおの嘘を終わらせに来た」
現役の捜査員たちが、にいつくばる野寺の背に膝を乗せ、両腕をねじりげた。 たい錠が、カチャリと男の首を噛む。
「放せ! 私は佐藤物流の代表だぞ! ともりいだ! こんな違法な捜索が通るとっているのか!」
喚きてる声は、オイルの染みたコンクリートに吸い込まれていった。 、男が必に守り続けてきた『社会信用』も『世体』も、のに剥がれ落ちていく。
「お母さん……!」
私は母の元へ駆け寄り、縛られていたビニール紐を指で引きちぎった。 母のえ切った体が、私の腕のに倒れ込んでくる。 軽かった。 こんなにもさく、壊れそうな体をしていたのか。
「美奈……美奈……ごめんね……」 母の涙が、私の首筋に落ちた。温かかった。
救急隊員が駆け寄り、母をストレッチャーに乗せる。 赤灯が激しく回転する救急の部座席で、毛布にくるまれた母が、酸素マスクをして私のを握りしめた。
「お母さん、もう喋らないで」
「いいえ……言わなきゃいけないの」 母の唇はに変していたが、その瞳には、ぶりにれ渡ったが宿っていた。
「あの青い着……裏に縫い込んであったメモリーカードね」
「うん」
「……あれ、空っぽだったのよ」
息が止まりそうになった。
「え……?」
「お父さんが遺した本物の会計帳簿と裏の証拠はね……お父さんがくなった翌週に、私が公証役へ持っていったの」