みかん小説
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"母が消える直前の電話は、警察宛てだった" 第10話

……母は、で戦おうとしていた。 、恩のふりをして自分たち母娘を見ろし、父を殺し、娘を獄に突き落とした男に対して。

「母は今、どこにいるの!」

私はの胸ぐらに掴みかかりそうになるのを、必で堪えた。 は線を逸らし、奥の机のに置かれた枚のメモを指差した。

「野寺が昔から裏の隠し所に使っている、赤の麓の廃倉庫だ。……母親の携帯の源が切れたのは、昨の夜、その倉庫に入った直だ」

メモを引ったくるように掴んだ。 殴りきされた名と番。 『赤面 旧佐藤物流 第材ヤード』

「くけ」 は再びパイプ子に腰を落とし、震えるでタバコにをつけた。

「野寺は焦っている。母親が本物の証拠のありかを吐かない限り、殺すことはねえだろうが……の問題だ。あの男は、自分の世体を守るためなら、を消すことなんて何ともっちゃいねえ」

プレハブをびした。 たいが、容赦なく私の顔を打った。

タクシーを呼ぶすら惜しかった。 解体ヤードのまでり、通りで拾った個タクシーの運転に、メモの所を突きつけた。

「赤の麓まで、ばしてください。できる限り急いで!」

がしぶきをげて夜へびす。 窓を流れるの灯りが、標をげるにつれてつ、またつと消えていく。

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暗。 い、底なしの暗。

助席のメーターのだけが、気に揺れていた。 私はスマートフォンを取りし、元警部の番号を表示させた。 指が送信ボタンので止まる。

今、警察を呼べばどうなる? パトカーの赤灯とサイレンがを満たした瞬、野寺は何をする? 証拠を隠滅し、母のを永に塞ぐのではないか。

と同じだ。 警察の制度や世体の網の目を縫って、あの男はいつも逃げ延びてきた。

ヤードの入りから百メートルので、タクシーをりた。 ヘッドライトを消させ、運転にはここで待つように頼んだ。

アスファルトのは途切れ、砂利と雑のぬかるみへと変わる。 え込みが骨の髄まで染み渡る。 灯は本もない。 スマートフォンのライトを極限まで絞り、元だけを照らしながらんだ。

が、枯れ葉を巻きげる音。 くで利根川の支流が轟音をてている。

目のに、巨ながち塞がった。

錆びた刺鉄線が張り巡らされたフェンス。 その奥に沈む、階建てのスレート葺きの巨な倉庫。 壁のトタンは剥がれ落ち、窓には何にも防犯用のベニヤ板が打ち付けられている。

気はない。 けれど、敷の奥に、あの黒塗りのセダンが確かにまっていた。

のにを踏み入れた瞬、グチャリとい触が靴底に伝わった。

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……ん?

ライトの微かなを元に向けた。 のに、何か鮮やかなのものが半分埋もれていた。

しゃがみ込み、震える指でそれを拾いげる。

赤い、プラスチックのヘアゴム。 飾りの部分に、さな傷がついている。

息が止まりそうになった。 母が、スーパーのパートにくとき、いつも髪をろで束ねるのに使っていたヘアゴムだ。 ゴムの表面には、まだ母の使っている物のシャンプーの匂いが、微かに残っていた。

母は、ここにいる。 このたいのに引きずり込まれたんだ。

涙が溢れそうになるのを、奥歯を噛み締めて押し殺した。 トートバッグを固く握り直し、フェンスの破れ目から敷のへとを滑り込ませた。

壁のにを潜め、階を見げる。

ベニヤ板の隙から、黄いが漏れていた。

カチリ。

静寂を引き裂くように、属が擦れうい音が、階の窓の隙から落ちてきた。

息を呑み、壁に張り付く。

板の隙の向こう側。 暗い球のかりに照らしされた、チャコールグレーの等なウールコート。 えられた髪。

野寺誠が、無表にのジッポライターのを見つめていた。

が消え、煙がゆっくりとちる。 その酷に研ぎ澄まされた横顔の奥に、の優しい「叔父さん」の面は、微も残っていなかった。

に浸かった母の赤いヘアゴムを、ポケットの奥くへねじ込んだ。

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