"母が消える直前の電話は、警察宛てだった" 第9話
「そうだ。当、俺の運送会社はのだった。から数百万の借を抱えて首が回らなくなっていたところに、野寺が現れた」
の濁った瞳が、過の暗がりを覗き込むように細められた。
「『佐藤物流の08号を使え。廃続きは済んであるから、警察のNシステムにも引っかからない』……そう言って、鍵と現百万を渡された。仕事の内容は簡単だった。『佐藤隆志のガキを学帰りに拾って、連れて来い』とな」
「代目当てじゃ、なかった」 言葉が喉に引っかかり、掠れた。
「代? そんなもん、端から求する気配すらありゃしねえよ」 は吐き捨てるように言った。
「野寺の指示はつだけだった。『ガキのとランドセルを徹底に探せ。の裏かカバンの底に、マイクロSDカードが縫い付けられているはずだ。見つけたらカードだけ持ってこい。ガキはどこかの駅に放りせばいい』ってな」
ので、全てのピースが激しい音をてて噛みっていく。
父は、野寺の正を暴く告発データを、母に託した。 母はそれを守るため、私のの裏に縫い込んだ。 野寺はその報を掴み、を使って私を誘拐させ、データを奪おうとした。
……だが、狂いがじた。
「おを攫ったあの、俺はおのランドセルを切り裂き、着ていたのポケットを全部裏返した」
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が私の顔を睨みつけた。
「だが、何もねえ。おはただの、っぺらいのセーターを着ていただけだった。着なんてどこにもなかったんだよ!」
寒気が全を駆け巡った。
そうだ。 あのの朝。 母は私に『寒くなるから、あの青い着を着ていきなさい』と言った。 けれど私は、友達とお揃いのマフラーを巻きたくて、着を玄関のフックに脱ぎ捨てて学へったのだ。
母がデータを縫い付けた青い着は、最初から実の玄関に残されていた。
「カードが見つからねえと野寺に話したら、あの野郎、受話器の向こうで狂ったように鳴り散らしやがった。『のにも着がない、どこへやった!』ってな」
の声が、当の混乱をいして微かに震えていた。
「俺は怖くなって、おを別の所へ移そうとした。だがそのに、パトカーのサイレンが聞こえた。……警察にタレ込んだのは、野寺だよ」
息を呑んだ。
「野寺が……警察に通報したの?」
「現におのがないと分かった瞬、あいつは計画を切り替えたんだ。誘拐事件として警察をかし、自分は『配する父親の同僚』として現に乗り込む。そして、混乱に紛れておに着を着せ、そのでを確認する……そういう筋きだ」
警察の記録。 『被害女児救、青の着を着用』。 病院のカルテ。 『・セーターのみ。
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なし』。
野寺は、実から持ちした青い着を現に持ち込み、救されたばかりの私に羽織らせた。 警察官たちの目を盗み、泣き叫ぶ私の背を抱くふりをして、裏の縫い目を裂き、のカードを抜き取ったのだ。 そして、救急が到着する直に着を回収し、、何わぬ顔で母へ返却した。
完璧な隠蔽。 、誰も疑わなかった善の仮面。
「……じゃあ、母はどうして野寺のところへったの」 私の声は、もはやりで震えていた。
「母は、野寺が犯だと分かっていたはずでしょう? どうして警察にかずに、あいつのところへ……!」
は顔を歪め、首を横に振った。
「おの母親はな、最初から警察なんて信じちゃいなかったよ。、警察があの男の言いなりになって事件を片付けたのを見ていたからな。……母親は、あいつに引導を渡しにったんだ」
「引導……?」
「おの母親は、俺ので笑ったんだよ。『野寺は、自分が全てをに入れたとい込んでいる』『でも、あいつが現で盗みしたカードは、ただの空箱よ』ってな」
のが真っになった。
空箱? どういうこと?
「父親はな、そんなに甘い男じゃなかったんだよ」 が乾いた声で言った。
「本物のデータは、カードになんて入っちゃいなかった。おの母親は、夫から預かった本物の証拠を、野寺のの届かない別の所に隠していたんだ。
母親はそれを盾にして、野寺を自首させる気だった」