"7年前に失踪した夫は、12年前から目が見えない" 第4話
玄関に入った瞬、悠真は内側から鍵をに閉め、ドアチェーンを乱暴に掛けた。
ガチャリ、とい属音が玄関に響く。 その怯え切ったつきを見て、私の胸のざわつきは頂点に達した。
悠真は革靴を脱ぎ散らかしたまま、自分の部へ駆け込んだ。 奥のクローゼットを激しく漁る音。 何かがに落ちる音。
数分、リビングに戻ってきた息子のには、埃をかぶった古いビスケットの缶があった。
缶の蓋がけられる。 から取りされたのは、画面が細かくひび割れた古いスマートフォンと、隅が擦り切れた枚の写真。
テーブルのに、それらが放りされるように置かれた。
「……悠真?」
息子は荒い息を吐きながら、充血した目で私を見つめた。 その瞳の奥には、歳のあのからずっとで抱え込み、胸ので腐らせてきた底れないが淀んでいた。
「母さん。父さんは張先で失踪したんじゃない」
息子の乾いた唇から、震える声がこぼれ落ちる。
「のあの……父さんを消したのは、の誰でもない。俺なんだ」
テーブルのに置かれた擦り切れた写真には、の悠真が写っていた。 学の青いジャージを着て、ぎこちなく笑う歳の息子。
その横にある、画面が蜘蛛の巣状に割れた古いスマートフォン。 悠真の細い指が、震えながら画面をタップした。
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「……何なの、これ」
私の声は、くかすれていた。 胃の底が鉛をみ込んだようにい。
悠真は顔をげない。 両膝のに拳をぎゅっと挟み込み、絞りすようにをいた。
「、父さんが張にくの週……父さん、夜に何度もベランダで誰かとコソコソ話してたんだ。絶対に母さんには聞かれないように、さな声で」
息子の告が、静まり返ったリビングに落ちる。
「最初は……別の女のがいるんじゃないかってった。父さんが母さんを裏切ってるんじゃないかって。だから、あの、父さんのをつけたんだ。学にくふりをして」
歳の悠真が、父親を尾した。 、度も聞いたことのない事実だった。
「父さんは鶴見の古いアパートに向かった。そこで、誰かを待ってた。でも、現れたのは女のじゃなくて……パーマをかけた、柄の悪い男だったんだ」
悠真の呼吸が荒くなる。 当の恐怖が、歳の体をいま再び締めげているのが見て取れた。
「はものすごい剣幕で鳴りってた。父さんが類みたいな封筒を握りしめて、『をどこへやった』『警察にく』って叫んでた。そしたら、の物に隠れてた俺に、その男が気づいたんだ」
『おいガキ、何見てんだよ』
男はそう鳴り散らしながら、悠真の腕を乱暴に掴んだという。
「怖くて……必で振り払おうとした。
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腕を引かれた勢いで、俺、男の胸を力いっぱい突きばしたんだ」
男は背のアパートの階段にを引っ掛け、そのまま部からコンクリートの側溝へ崩れ落ちた。
鈍い、骨が砕けるような音。 側溝のグレーチングの隙から、どす黒い血がどっと溢れたという。
「男はピクピク痙攣して、目をけたままかなくなった。俺……を殺しちゃったとった。腰が抜けてけなくなった俺のところに、父さんが血相を変えてってきた」
直は悠真の肩を激しく揺さぶり、鳴りつけた。
『悠真、れ! 今すぐここから逃げろ!』
直は自分のスマホで震えるで番を押し、救急を呼びながら、息子を突きばすようにして逃がした。
『いいか、誰にも言うな! 母さんにも絶対だ! おは何も見ていない、何もやっていない! いいかられ!』
それが、悠真が見た父親の最の姿だった。
翌朝、直は何事もなかったかのような顔で朝をべ、悠真をで駅まで送り、「仙台へ泊の張だ」と言ってをた。 そして、度と戻らなかった。
「俺が……男を突き落としたからだ」
悠真はにを擦りつけるようにして、嗚咽を漏らした。
「父さんは、俺の代わりになったんだ。あの男がんで、父さんは警察に追われて、俺を守るために名を捨てて逃げ回ったんだ……俺が、父さんを奪ったんだよ……!」
胸が張り裂けそうだった。 歳の子どもが、たったで。 「自分が父親を犯罪者にし、破滅させた」