"ただの送金係にされた母親" 第9話
【09】「お義母さんが、彼に完璧な仮面を被せたんです」
駅の古びた喫茶の奥の席。運ばれてきたアメリカンコーヒーから湯気がちっていたが、私と彩さんのどちらも、それにをつけることはなかった。
テーブルのには、昨夜彩さんが息子の部から見つけしたという消費者融の利用細と、私が持参した分の送記録のコピーが並べられていた。
「、私が正弘さんと別れたのことです」
私は乾いた唇をいた。逃げずに、事実だけを話さなければならない。
「元夫は事業の失敗をのせいにし、ので鳴り散らし、最には私の実の貯にまでをつけようとしました。私は歳だった翔太のを引いて、着の着のままで逃げしたんです」
彩さんは背筋を伸ばし、静かに私の言葉を聞いていた。
「私は翔太に言いました。『お父さんに会いたいなら会ってもいい。でも、お父さんの話は私ので度としないで』と。……私は、それがの分別だとっていました。元夫を悪く言わず、息子の自由を奪わない、寛な母親のつもりだったんです」
「いいえ」
彩さんのややかな声が、私の告を容赦なく遮った。
「それは寛なんかじゃありません。お義母さんが彼に、完璧な仮面を被せたんですよ」
私は息を呑んだ。
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「歳の男の子ですよ? 好きな母親から『父親の気配を切見せるな』と命じられたら、どう受け取るといますか? お父さんを恋しがれば母親を裏切ることになる。困った顔を見せれば母親をしませる。だから彼は、お義母さんのでは『父親なんてとっくに忘れた孝息子』を演じるしかなかったんです」
彩さんの瞳に、鋭いが宿る。
「そして、倒れた父親から連絡が来た、彼はつの世界を完全に切りして維持することを選んだ。お義母さんには活苦を装って仕送りを貰い、お父さんには世したと嘘をついて施しを与える。そうやって全員の嫌を取り、全員にとって都のいい『頼れる自分』を守り続けてきたんです」
「彩さん……」
「私が許せないのは、彼が父親におを送っていたことそのものじゃありません」
彩さんはテーブルのの細を指先でく叩いた。
「彼は、が真実をったにす『自分にとって都な決断』が怖くてたまらないんです。お義母さんに嫌われるのが怖い。お父さんに失望されるのが怖い。私に結婚を断られるのが怖い。だから自分で報を握りつぶし、嘘と借で辻褄をわせて、全員をコントロールしようとした。その結果が、この万の借です」
胸の奥が激しく軋んだ。彩さんの言葉は、私と元夫がかけて息子のに植え付けた病巣を、正確にえぐりしていた。
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その、私のバッグのでスマートフォンが鋭い着信音を鳴らした。
画面に表示されたのは、昨常磐線に乗って訪れたあの所の番号だった。
『介護老保健施設 藤の苑』
昨、受付で緊急連絡先として私の話番号を控えさせていたのだ。嫌な予が全を駆け巡る、私は通話ボタンを押した。
「はい、です」
『あ、正弘様のご族の久美子様でしょうか。藤の苑の主任ケアマネジャーの佐藤です。至急、お伝えしなければならないことがございまして……』
話の向こうから、切迫した気配が伝わってきた。
『先ほど正弘様が施設内で転倒され、検査の結果、嚥能と認能の急激なが確認されました。当施設での般棟での対応は限界となり、来から専な医療ケアを伴う特別介護棟への移が決定いたしました』
「移……ですか?」
『はい。それに伴い、自己負担額が現の額万円から、万円に増額となります。至急、来以の支払いについてご相談させていただきたく、お話いたしました』
万円。
その数字を聞いた瞬、私の界がぐらりと揺れた。