"ただの送金係にされた母親" 第8話
【08】 ポストの底からてきた消費者融の督促状
『至急封 最終通告』
差の欄には、誰もがテレビCMでにしたことのある消費者融の名が印刷されていた。
そして宛名は、違いなく『 翔太』となっていた。
写真に続いて、彩さんからのいメッセージが流れてきた。
『居に残した荷物を引き取りにったら、集ポストの底にこれが挟まっていました。お義母さん、今お話しできますか』
私は騒然とする待から逃げるようにへた。
初のたいが吹き抜ける施設の駐で、私は震える指で彩さんの話番号をタップした。
ワンコールで繋がった。
「もしもし、お義母さん」
彩さんの声は、昨の披宴のよりもさらにく、沈み切っていた。
「彩さん、あの写真は……」
「翔太さんの部の引きしから、細も見つけました」
受話器の向こうで、が擦れるカサカサという乾いた音がした。
「のから借り入れが始まってます。限度額いっぱいの万円。先から返済が滞っていて、遅延損害を含めて残は万くになっていました」
「万……? どうしてそんな……」
「調べました。翔太さんの会社の同期の子に、私の友がいるんです。失礼を承で聞きました」
彩さんは度、く息を吸い込んだ。
「翔太さん、のに担当していたプロジェクトできなミスをして、役職当をされていたそうです。
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基本が取りで万円くがっていました」
を鈍器で殴られたような衝撃だった。
取りが万減った。
それなのに、この子は——。
「取りが減ったのに、お義父さんの施設代の万円は払い続けなきゃいけなかった。お義母さんには『順調に働いている』と言い張って仕送りを断ることもできず、私には減を隠して結婚式の準備費用を折半しなきゃいけなかった。だから、りない分をカードローンで埋めていたんです」
彩さんの言葉が、つつ、い鉛の塊となって私の胸に落ちてくる。
「嘘をついて親孝のフリをして、嘘をついて頼もしい夫のフリをして……。結果がこれです。自分の見栄のために、借を作ってまで全員にいい顔をしようとしていたんです」
「彩さん、私……私、何もらなくて……」
私の声が震えていた。
母親として、息子の異変に何つ気づいていなかった。
毎万円を振り込み、「これで母親としての責任は果たしている」と自己満に浸っていたのだ。
「お義母さん。責めているわけじゃありません」
彩さんは徹に言った。
「でも、はっきり分かりました。翔太さんは、優しいから嘘をついていたんじゃないんです。誰かが傷つくのを恐れていたんじゃない。自分が『完璧で、頼りがいがあって、誰も困らせない男』でいられなくなるのが怖かっただけです。
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が真実をって、自分に失望する瞬から逃げ回っていただけなんです」
その分析は、あまりにも正確で、残酷だった。
自販ので「誰も困らないようにしたかった」と泣き叫んでいた息子の顔が脳裏に蘇る。
あの涙は、誰のためでもない。
自分の保のためだけの涙だったのだ。
「このまま婚姻届をしていたら、私はらずらずのうちに、あのの見栄の借を緒に背負わされるところでした」
彩さんの声に、迷いはなかった。
「お義母さん。、をいただけますか? 翔太さんを交えて、で話さなければならないことがあります」
「……分かりました。どこへけばいい?」
「駅の喫茶で。逃げのない所で話しましょう」
通話が切れた。
スマートフォンの画面が暗転し、私の疲れ切った顔が黒いガラスにぼんやりと映り込んだ。
見げると、介護施設の階の窓から、夕暮れの赤いが差し込んでいた。
、私が守ってきたはずの「平穏な庭」の正体。
それは、息子が必で繕い続けた、何もの嘘と借で固められた舟に過ぎなかったのだ。
そしてその舟は今、すべての穴からが吹きし、音をてて沈没しようとしていた。