"ただの送金係にされた母親" 第6話
【06】「母さん、もう頼むからこれ以壊さないでくれ」
「しなさい」
私はく、周囲に響かないように言い放った。
息子の指が私のバッグの持ちをく締めげていたが、私はそのをたく払い落とした。
「帰るわけないでしょう。あなたが隠し続けてきた所に、私が自分ので来たのよ」
「母さん、頼むから……!」
翔太はロビーの隅、自販売のへ私を無理やり引っ張り込み、消え入りそうな声で懇願した。
「彩も実に帰っちまって、俺はどうしたらいいか分からないんだよ。昨の今で、なんでこんなところまで追いかけてくるんだ? 親父はもう昔の親父じゃないんだ。半が麻痺して、子活なんだぞ。そんな老を問い詰めて、今さら何をしたいんだよ!」
「問い詰める?」
私は乾いた笑いを漏らした。
「私は問い詰めるために来たんじゃないわ。、私が汗流して稼いだおが、なぜ私を捨てて逃げた男のオムツ代やベッド代に使われていたのか、その事実を確認しに来ただけよ」
「あれは俺のだって言っただろ!」
「あなたの料だけでこの施設の費用が払えるわけないでしょうが!」
自販のモーター音に紛れさせて、私は歩詰め寄った。
「私が毎送っていた万円がなければ、あなたの活はとっくに破綻してた。あなたが『親孝』をするための支えを、なぜ憎んでいるはずの妻がさせられなきゃいけないの?」
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「俺はただ、誰も困らないようにしたかっただけだ!」
翔太の目が赤く充血していた。
「親父を見捨てたら親父が野垂れぬ。母さんに話したら母さんが傷つく。だから俺がで全部抱えて、誰にも迷惑をかけないように回してきたんじゃないか! 母さんはいつもそうだ。か黒か、正しいか違っているかだけで全部切り捨てる! 俺がどんないでそのにってきたか、しは考えたことあるのかよ!」
息子のからびした言葉に、私は息を呑んだ。
誰も困らないように。
誰にも迷惑をかけないように。
その言葉の裏にあるのは、優しさなどではない。
ただ自分が「良い息子」の座から滑り落ちたくないという、肥化したエゴだった。
「翔太様、どうされましたか?」
廊の奥から、いエプロンをつけた女性のケアマネジャーが、子を押しながら現れた。
子のには、浅黒く痩せこけた老が座っていた。
髪混じりの乱れた髪、腕だけで膝のの毛布を握りしめ、力なく垂れがった。
ぶりに目にする、正弘の姿だった。
かつてので声を張りげ、仕事がうまくいかない苛ちを物にぶつけていたあの男の面は、どこにもなかった。
たださく縮こまり、老いと病に蝕まれたの者がそこにいた。
正弘の濁った瞳が、翔太の隣につ私を捉えた。
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その瞬、男の表が直した。
「……久美子?」
掠れた、湿った声が正弘のから漏れた。
「なぜ、おが……翔太、どういうことだ? 母さんは方の親戚のくで穏やかに暮らしていて、俺のことなど完全に忘れて暮らしていると……そう言っていたじゃないか」
正弘の言葉に、私は隣の息子を見げた。
翔太は唇を真文字に結び、線を廊のの溝へと落としていた。
方で穏やかに暮らしている?
私は度たりとも京をたことなどない。
この男に、私のを都のいいくの世界へと追いやるために、息子はそんな嘘までついていたのだ。
私はバッグから、昨印刷した送細の束を取りした。
そして、正弘の膝のの毛布のに、音をててそれを叩きつけた。
「初めまして、ぶりね。あなたのその子と施設の費用、誰ので賄われていたか、ご?」
正弘の目が、のに印字された数字へと吸い寄せられた。