"ただの送金係にされた母親" 第5話
【05】 誰もいない居に残されたつの鍵
披宴が終わった翌の朝、郎婦が暮らすはずだった郊の賃貸マンションは、恐ろしいほど静まり返っていた。
リビングのには、昨式から届いたばかりの段ボール箱が未封のまま積まれている。
玄関の靴箱のには、つの真しい鍵が、たい属音をてそうなほど無造作に並べて置かれていた。
つは、彩さんのものだった。
昨夜、式併設のホテルをた直、彩さんはウェディングドレスを脱ぎ捨てて実へ戻った。
『話しう準備ができるまで、そこには戻りません』
そうかれたメッセージだけを残して。
翔太はどこを探してもいなかった。
話をかけても留守番話にすら繋がらず、LINEは既読にすらならない。
私は鍵には触れず、ただく息を吸い込んで玄関のドアを閉めた。
逃げ回る息子の言い訳を待つ気は、もう微もなかった。
私はそので駅へ向かい、郊へ伸びる私鉄の各駅に乗り込んだ。
窓の景が宅から畑と雑林へと移り変わっていく、私の膝のにあるトートバッグのでは、昨プリントアウトした分の送細がたく沈んでいた。
駅から線バスに揺られて分。
見渡す限りの田畑のに、巨なコンクリート造りの建物が建っていた。
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『介護老保健施設 藤の苑』
板の文字を見げた瞬、分の記憶が胃の底から苦い汚のように込みげてきた。
正面玄関の自ドアをくぐると、消毒液と独特の湿り気を帯びた空気がを突いた。
「いらっしゃいませ。面会の方ですか?」
受付カウンターの女性スタッフが、穏やかな笑顔で私を見た。
「正弘さんの面会をお願いしたいのですが」
私がそう告げると、女性スタッフのキーボードを叩く指がに止まった。
端末の画面を凝し、それから私の顔を訝しげに見つめ直す。
「失礼ですが、ご関係は……?」
「元、妻です。に婚しました」
その言をにした途端、受付の空気が凍りついた。
女性スタッフはらかに困惑した表を浮かべ、さな声で言った。
「申し訳ありません。正弘様の入所続きの際、元引受兼緊急連絡先はご子息の翔太様おで登録されております」
女性は机ののファイルをめくり、ある文を指差した。
『族トラブルの防止のため、男・翔太以の面会は切拒否する』
類の備考欄に、担当者のきでそう記されていた。
、完全に私を遮断するための壁が、こんな所にまで築かれていたのだ。
「私には会う権利があります。この施設に支払われている費用について、確認しなければならないことがあるんです」
「ですが、ご本のとご契約内容が……々お待ちください。翔太様にご連絡を取らせていただきますので」
スタッフが受話器をに当てた。
私は待のいビニールレザーのソファに腰をろし、壁の計を見つめ続けた。
それからわずか分。
自ドアが荒々しい音をててき、息を切らした翔太がロビーへび込んできた。
ネクタイをし、ワイシャツの胸元を乱した息子は、私を見つけるなり血相を変えて駆け寄ってきた。
「母さん! 何しに来たんだよ!」
翔太は私の肩にを伸ばし、乱暴にトートバッグの持ちを掴んでちがらせようとした。
「頼むから帰ってくれ! ここは母さんが来ていい所じゃない!」
ロビーのの利用者の線が斉に突き刺さる、翔太のが刻みに震えていた。