"ただの送金係にされた母親" 第4話
【04】「式にはる。でも、ハネムーンは解約して」
扉の向こうから、披宴会のざわめきと、オープニングムービーの壮な音楽が微かに漏れ聞こえていた。
あと、分。
翔太は崩れ落ちるようにそのにち尽くし、懇願するような目で彩を見つめた。
「彩、頼む……! 俺が悪かった。全部俺が悪かったよ。式が終わったら、今夜ホテルで全部話す。これまでのことも、これからのことも、全部正直に言うから……! 頼むから、今だけは式にてくれ!」
翔太の両が震えながら、彩のレースの袋に触れようとする。
部の隅につ私には、それが、私の嫌を損ねないように必で顔を伺ってきた息子の姿と完全になって見えた。
この子は、何かを解決しようとしているのではない。
ただ、目のの破局を、次の瞬まで先送りしたいだけなのだ。
彩は、差し伸べられた翔太のをじっと見つめ、それからゆっくりと息を吸い込んだ。
「式にはるわ」
翔太の顔に、あからさまな堵のが差した。
だが、彩が続けた言葉は、その甘い期待を氷のように切り裂いた。
「私の両親も、今のために仕事を休んで来てくれた友達も、職の同僚も、みんなあそこにいる。あなたたちの嘘のために、あのたちに恥をかかせるわけにはいかないから」
彩はウェディングドレスの裾をえ、徹な声で言い放った。
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「その代わり、のハワイ便は今すぐキャンセルして」
「え……?」
「ハネムーンなんてけるわけないでしょう。それから、持ってきた婚姻届」
彩はテーブルのに置いてあった自分のいパーティーバッグから、緑の用を引っ張りした。
翔太の署名と捺印がすでに済んでいる、未提の婚姻届だった。
「これは、私が預かる。役所にはさない」
「彩、待ってくれ! そこまでしなくても——」
「当たりでしょう!」
彩の瞳に、初めて鋭い刃のようなりが宿った。
「私は今、あなたと『族』になるためにここに来たの。でもあなたがやってきたのは、族のフリをした隠蔽作よ。そんな状態で、誰が法律の夫婦になんてなれるのよ」
彩は婚姻届をバッグの奥底へねじ込むと、度も翔太の顔を見ることなくドアへと歩きした。
「くわよ。郎の笑顔くらい、最まで演じきりなさい」
ドアがき、彩の純のドレスが廊ののへと消えていく。
取り残された翔太は、ネクタイを乱したまま、幽霊のような取りでそのを追った。
私は、い取りで親族席へと向かった。
扉がかれ、盛なファンファーレが鳴り響く。
何百もの拍とフラッシュを浴びながら、スポットライトのを腕を組んで歩く郎婦。
翔太は完璧な笑顔を作っていた。
彩もまた、完璧な嫁の微笑みを浮かべていた。
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テーブル席から見げる参列者たちは、誰も気づいていない。
あの華やかな笑顔の裏で、の関係がすでに音をてて崩壊していることに。
私は黒留袖の膝ので、きつく拳を握りしめていた。
胸の奥にあった「塩にかけて育てげた息子」というは、完全に消えっていた。
そこにいるのは、私の嫌を取るために父親を消しり、妻を繋ぎ止めるために現実を都よく改ざんしてきた、の臆病な成男性だった。
そして、その怪物をみした最初のきっかけは、に私が吐き捨てた「あいつの話は度とするな」という、勝な拒絶だったのだ。
拍の、私はバッグのにあるスマホをく握りしめた。
画面には、先ほど控でメモした介護施設の所が残っている。
翔太のフィルターを通した言い訳など、もう聞くつもりはなかった。
、私は自分ので「藤の苑」へく。
ぶりに、あの男のにって、すべてをこの目で確かめるために。