"ただの送金係にされた母親" 第3話
【03】「お父さん、とうの昔にんだって言ってたよね?」
ドアのからの呼びかけに、翔太の顔から完全に気が消えた。
「彩……」
翔太は慌てて鍵をけようとドアへ駆け寄ったが、私が先に内鍵をした。
扉が勢いよくく。
レースのベールを揺らし、ブーケをにした彩が、怪訝な表で部に踏み込んできた。
「どうしたんですかとも? あと分でリハーサルですよ、司会の方も探して……」
彩の言葉が、途で止まった。
に落ちかけたタキシードの着、私の張ったち姿、そして何より、滝のような汗を流しながら線を泳がせている翔太の異様な様子に気づいたのだ。
「……何があったんですか?」
「何でもないんだ、彩」
翔太はいつもの調子を取り繕うように、ひきつった笑みを浮かべて彩の肩にを置こうとした。
「式の段取りで、ちょっと母さんと見がい違ってさ。俺がすぐくから、彩はメイクに戻っててくれ」
そのあからさまな誤魔化しに、私は耐えられなかった。
「彩さん」
「母さん、やめろ!」
翔太が叫んだが、私はガラステーブルののスマホを指差した。
「このはね、あなたにも嘘をついてるわ」
彩の線が、テーブルのの画面に落ちた。
『振込先:介護老保健施設 藤の苑 入所者: 正弘』
彩のった眉が、ぴくりといた。
彼女はスマホに歩み寄り、画面に表示された文字をじっと見つめた。
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「藤の苑……、正弘……?」
彩がゆっくりと顔をげ、翔太を見据えた。
その瞳には、混乱よりも先に、ややかな警戒のが宿っていた。
「正弘って……翔太さんのお父さんの名よね?」
「あ、いや、それは……親戚の、昔お世話になったで……」
「嘘をつかないで」
彩の声は、驚くほど静かだった。
だがその静けさこそが、底れないりを物語っていた。
「あなた、私に言ったよね。付きい始めたも、両親への挨拶のも」
彩が歩、翔太に詰め寄る。
「『父親とは学の頃にき別れて、もう何も音信通だ。どこできてるかも、んでるのかもらない』って」
「彩、聞いてくれ。あれは……」
「毎5万円。これ、今だけじゃないじゃない。いつから振り込んでるの?」
「……3からだ」
翔太が観したように、掠れた声で答えた。
「親父が倒れて、どうしてもが必になって……でも、おには余計な配をかけたくなかったんだ。俺たちの活には絶対に響させないつもりだった。だから——」
「余計な配?」
彩が、く息を吐いた。
「私たちの活に響がないわけないでしょう? これから賃を払って、で貯して、子供のことだって考えていかなきゃいけないのに。毎5万も施設に消えてることを、どうして『らなくていいこと』にできるの?」
「俺の料の範囲でやりくりしてたんだ!」
「その分、お義母さんから毎仕送りをもらってたんでしょう!?」
彩の鋭い指摘に、翔太が息を詰まらせた。
彩は私の方を瞬だけ見やり、そして再び夫となるはずの男に向き直った。
「お義母さんを騙してを受け取って、私には父親がきていることすら隠して。そうやって誰も傷つけないフリをして、自分でいい顔をして……」
彩の指先が、ブーケの茎をくなるほどく握りしめていた。
「翔太さん。あなたにとっての『族』って、都の悪いことを全部隠して誤魔化しう関係のことなの?」
その、ドアが激しくノックされた。
「郎婦様! 入まであと分です! 扉のへスタンバイをお願いします!」
プランナーの切迫した声が、残酷な現実のタイムリミットを告げていた。