みかん小説
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"無償シッター扱いの母" 第19話

臭い常の始まりと、遅れて届いた自

契約が交わされた翌から、がの空気は変した。

奇跡のような解やすがすがしいハッピーエンドなど、現実にはしない。

始まったのは、ただひたすらに臭く、気まずく、現実な「同居」だった。

階の客に理の荷物が運び込まれたが、かつてのようにリビングに私物を散らかすことは許さなかった。

廊に脱ぎ捨てられた理の着は、私が無言で階のドアノブに引っ掛けた。

槽に放置された汚れた皿は、私が洗うのではなく、「理、お皿」とく声をかけて自分で洗わせた。

曜と曜。

私は約束通り、半に悠斗を保育園へ迎えにった。

悠斗とをつないで夕暮れのを歩き、好きなハンバーグを作り、緒にお呂に入って絵本を読んだ。

そのだけは、私もから孫とのを楽しむことができた。

「自分の志で引き受けた」だからこそ、に切の濁りがなかったのだ。

けれど、曜、曜、曜の午。

私は自分の部のドアを、きっちりと閉めた。

退職に始めた通信教育のペン字講座のテキストをき、お気に入りのアールグレイを淹れる。

あるいは、痛む腰を労わるために、所の形科のリハビリに通った。

夕方半を過ぎると、階からバタバタと慌ただしい音が聞こえてくる。

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「悠斗、く靴脱いで! もう、洗いうがい!」

「ママー、お腹すいたー!」

「今作るから待ってて! あーもう、牛乳買い忘れた……!」

息を切らして帰宅した理が、キッチンで荒にフライパンを振るう音が響いてくる。

かつての私なら、居てもっても居られず階段を駆けり、「お母さんがやってあげるわよ」とをしていただろう。

だが、私はかなかった。

カップをに運び、静かにペンを握り続けた。

ドアを枚隔てた向こうで、娘が自分の活のみと格闘する音を、ただじっと聞き届けていた。

理も変わらざるを得なかった。

曜の残業をこなすため、娘はをげて司と掛けい、週に回の宅勤務を勝ち取ってきた。

曜の延保育のために、区役所の窓に何度も通い、シングルマザー向けの補助制度を自力で申請した。

夜遅く、階から聞こえてくる理のため息は相変わらずかったが、そこには以のような「誰かのせいにする甘え」は消えていた。

自分の選んだに、自分のでとうとするの、い覚悟が宿り始めていた。

そして、約束のヶが経とうとしていた旬。

「お母さん、お父さん。ちょっといい?」

夕の、理がリビングにりてきた。

テーブルのに置かれたのは、枚の賃貸契約だった。

実からで駅れた所にある、築の2DKのアパート。

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「審査、通ったから。来週の曜、引っ越すね」

理の顔は、ののあの幽霊のような青さはなく、し痩せていたが、引き締まったいい顔をしていた。

「……そう。決まったのね」

私が微笑むと、理はし照れくさそうに線を泳がせ、ぽつりと言った。

「曜と曜、本当に助かった。あれがなかったら、私、最初のひとで完全に潰れてたとう」

「いいのよ。約束だったから」

「……あと、ごめんなさい。昔の私、本当に酷かったよね」

娘のからた、初めての本当の謝罪だった。

「お母さんが笑って何でもやってくれるから……それが当たりだとってた。お母さんにも、お母さんのがあるなんて、考えたこともなかった」

私は何も言わず、理のをそっと握った。

のひらに、ペンだこと、事で荒れたい触があった。

それは、娘が本物の「母親」になった証拠だった。

引っ越しのの朝、トラックに積まれる荷物を見送りながら、悠斗が元気にを振った。

「おばあちゃん、またね!」

のは、嘘のように静まり返った。

けれど、ののあの息の詰まるような苦しさは、もうどこにもなかった。

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