"無償シッター扱いの母" 第17話
「頼ることと、私のを埋め尽くすことは違う」
「……理」
私の声は、く、静かだった。
鳴り散らすでもなく、泣き崩れるでもない。
ただ、の独したとして、目ののに向きう声だった。
「あなたはさっき、『実の親にも頼れないなら』と言ったわね」
理の肩がビクッと揺れた。
「頼ってもいいのよ」
「……え?」
予の言葉だったのか、理が瞬きを繰り返した。
「あなたは私のたったの娘よ。健太さんと別れて、で悠斗を育てていくのが、どれほど怖くて細いか。母親である私に分からないはずがないでしょう」
理の瞳に、再び希望のが微かに宿りかけた。
『やっぱり助けてくれるんだ』という甘えが、顔をもたげようとした。
だが、私はその先を許さなかった。
「けれどね、理」
私は赤い線でぐちゃぐちゃになったスケジュール表を、指先でトントンと叩いた。
「頼ることと、私のの空をあなたの都で埋め尽くすことは、全く別のことよ」
理の息が止まった。
「この表を見てごらんなさい。朝から晩まで、平も週末も、私のがあらかじめ全部あなたのものとして予約されている。私がいつ起きて、いつ散歩にって、いつ友と会って、いつ夫と旅にくのか……私の志は、こののどこにいてあるの?」
「それは……お母さんは退職して、暇なんだと……」
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「暇だからって、差しさなきゃいけない理由にはならないわ」
私の言葉に、理が息を詰まらせた。
「お母さんには、お母さんのがあるの。働いて、やっとに入れた、私だけのがあるのよ。それをあなたに無条件でけ渡す筋いは、どこにもない」
「でも……!」
理の目から、粒の涙がボロボロとこぼれ落ちた。
「だって、お母さん、今までずっとやってくれたじゃない! 毎週曜だってご飯作ってくれて、悠斗のも買ってくれて、私が『お願い』って言ったら度だって断らなかったじゃない! なんで今さら、急にそんなこと言うのよ……!」
娘の慟哭が、私の胸を抉った。
逃げてはいけない。
ここで娘を責めてて「あなたが図々しいからだ」と突き放すのは簡単だ。
だが、それでは何も解決しない。
私はく息を吸い込み、娘の濡れたの甲に、自分のをそっとねた。
「……そうね。あなたの言う通りよ」
「……え?」
「私が、悪かったの」
隣で隆がさく息を呑む気配がした。
「あなたが困るに、私が先回りしてを差し伸べ続けた。頼まれてもいないのに『やってあげる』と言って、あなたの嫌を取っていた。断るのが怖くて、嫌われるのが怖くて、いつだって『いいわよ』と笑っていた」
私の目からも、い涙がひと筋、頬を伝った。
「あなたをこんなにしたのは、私よ。理。私が、あなたに『お母さんは無限に使える便利なだ』とい込ませてしまったの。
私のさが、あなたから自する会を奪っていたのね」
理が固まった。
りで赤くなっていた顔が、徐々に別の――まれて初めて突きつけられた、純粋な戸惑いへと変わっていく。
母が謝っている。
自分を責めるでもなく、突き放すでもなく、自らの過ちとして引き受けている。
「だから、理。私はもう、あのの切は渡さない」
私は涙を拭い、赤ペンのキャップを握り直した。
「これからは、私がどこまで伝えるか、どこからが無理なのか、全部私のから言うわ。あなたが勝に決めるんじゃない。私が決めるのよ」