"無償シッター扱いの母" 第12話
斎の引きしから見つかった、破棄されたフェリー予約
ファミレスからい取りで帰宅した、のはしんと静まり返っていた。
靴箱のには、隆の用の革靴がない。散歩にでもかけたのだろう。
腰の痛みが限界に達していた。
骨の奥が鈍く脈打ち、背全体が鉄板のように張っている。
「……湿布、もう切らしてたかしら」
洗面所の戸棚を探したが、使い古した包帯しか残っていなかった。
隆の斎の薬箱に、以彼が肩で形科からもらってきたい鎮痛消炎パップ剤が入っていたはずだ。
私は暗い斎に入り、デスクの側にあるい引きしをけた。
然と並べられた類ファイル、古い万、そして製の救急箱。
目当ての湿布を取りし、引きしを閉めようとした、そのだった。
救急箱のに敷かれていた、見慣れない青いクリアファイルが目に入った。
挟まれていたのは、旅代理のロゴが入ったA4の類だった。
『ご旅契約解除通・払戻細』
何気なく目を落とした私は、そこに印字された文字に息を呑んだ。
ツアー名:【商井さんふらわあでく】初の・樽〜函館 ゆったり期滞プラン(30)
発:20261110
申込者:佐藤 隆 / 佐藤 千恵
取消:20261011
取消理由:お客様ご都によるキャンセル
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取消料(違約):184,000円
から湿布が滑り落ちた。
。
カレンダーを繰るまでもない。
あのだ。
隆がダイニングから悠斗のキッズチェアを納戸に押し込み、
「から、あいつをに入れるな」と私に言い放った、あの曜の朝だ。
震える指で類の隅々を確かめる。
取消料、万千円。
夫婦で、退職をしずつ積みてて楽しみにしていた、あの旅。
「退職したら、フェリーの特等を取って、洗からゆっくりを眺めながらこうな」
「が本格になるの函館の朝で、美しいイカをべましょうね」
何もから、でパンフレットに付箋を貼りって見ていた計画だった。
それを、夫は。
理が「婚したい」と泣きついてきたあの直に、私に言の相談もなく、万円い違約を払って勝に解約していたのだ。
パサリ、とファイルのからもう枚のレシートが落ちた。
旅代理のカウンターで発された、キャンセル確認の控えだった。
備考欄には、夫の乱暴な跡で、こうりきされていた。
『どうせ千恵は断れない。旅は無理だ。即解約のこと』
臓が鐘のように打ち鳴らされた。
血が逆流するような覚だった。
夫は、理を追い払おうとしていた。
「おのためだ」「おが体を壊すからだ」
と、正義の方の顔をして娘を玄関で払いした。
けれど、実態は何だ。
夫は最初から、私を信用していなかったのだ。
私が娘の涙に負け、結局は旅を投げして孫の世話にいつくばるに決まっていると、から決めつけていた。
私を守るため?
冗談じゃない。
夫が守りたかったのは、旅のキャンセル料惜しさの保と、自分の平穏な隠居活だけだったのだ。
私がどうしたいのか。
私がどんないで旅を待ちにしていたのか。
そんなことは最初からにない。
娘は私のを無償で奪おうとし、
夫は私の未来を勝に諦めて捨てていた。
ガチャリ、と玄関のく音が静かなに響いた。
い音とともに、隆が帰ってきた気配がした。
私は類を握りしめ、え切った指先で斎のドアを押しけた。