"無償シッター扱いの母" 第7話
夜22半、めたシチューと娘の「疲れた」
曜の夜。
リビングのペンダントライトので、私はえ切った鍋を見つめていた。
腰には湿布を枚貼り、ドラッグストアで買ってきたコルセットをきつく巻き付けている。歩くたびに腰骨の奥がズキズキと痛み、呼吸が浅くなる。
悠斗は薬が効いたのか、半にはががり、階の客でのように眠っていた。
理からは、定を過ぎた過ぎにいメッセージが入っていた。
『緊急の引き継ぎが入った! 今泊まりにする! ご飯べさせて寝かせといて!』
それっきり、連絡は途絶えていた。
カチ、カチ、カチ。
計の針が静かに半を指した、ようやく玄関の鍵がガチャリと乱暴にく音がした。
ハイヒールを脱ぎ散らかす音。
ドサリと、いビジネスバッグが廊のに放りされる音。
「……あー、ぬかとった。マジでありえないんだけど」
リビングのドアをけて入ってきた理は、コートを着たままソファに倒れ込んだ。
ストッキングのを投げし、腕を目元に当ててい溜息を吐きす。
「お帰り、理。遅かったわね。変だったのね」
私は痛む腰をで押さえながら、キッチンにってガスコンロにを点けた。
シチューを温め直すのは、これで度目だった。
「変なんてもんじゃないよ。
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任の男がクズすぎて、データの引き継ぎ全然やってなくてさ。司には初から嫌言われるし……はあ、マジで最悪」
理は井を見げたまま、愚痴をマシンガンのように吐きした。
健太さんのこと、しい職の関係、通勤の混雑。
「……悠斗、はがったわよ。夕方にうどんをしべて、今はぐっすり寝てる」
「あ、そう。よかった。お母さん、さすがだね。助かったー」
スマホの画面をスクロールしながら、理はのこもっていない声で言った。
度も私の顔を見ようとしない。
私が腰にを当てて自然な姿勢でっていることにも、顔が気になっていることにも、まるで気づいていないようだった。
「ほら、シチュー温まったわよ。しでもお腹に入れなさい」
テーブルにトレイを運ぶと、理は「ん、ありがと」とく呟き、スプーンをに運んだ。
そして、、と咀嚼したところで、ふいに眉をひそめた。
「……なんか、くない? 今」
「え?」
「疲れてるからかな。もうし塩気がある方がいいんだけど。あ、あとさ、お母さん。玄関に悠斗のだらけの靴入れた袋置いてあるから、までに洗っといて。替えがもうないの」
臓のあたりが、スーッとえていくのをじた。
「……理」
「なに?」
「悠斗、昨度分までがったのよ。座の約束も、キャンセルしたの」
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私の声に含まれていた微かな棘に、理はようやくスプーンを止め、怪訝そうに私を見た。
「うん、だからさっき『助かった』って言ったじゃん。何? 私、仕事でどうしても抜けられなかったんだから仕方ないでしょ? 遊んでたわけじゃないんだよ」
悪びれる様子は微もなかった。
理の瞳にあるのは、ただ純粋な「なんで責められなきゃいけないの?」という困惑だけだった。
娘にとって、私が仕事を休んだ友にをげたことも、自腹でキャンセル料を払ったことも、腰を痛めて湿布を貼りながらめた鍋を温め直していたことも、すべて「お母さんがんでやってくれている常の背景」に過ぎないのだ。
理は完した皿をテーブルの端に乱暴に押しやり、ちがった。
「ごちそうさま。シャワー浴びて寝るね。の朝、悠斗の着替えよろしくー」
槽に放り込まれた汚れた器のを残し、娘は音をてて階へがっていった。
夜。
たいでベタつくフライパンを洗いながら、私は台所で、震えるを見つめていた。
娘の吐きした「疲れた」という言葉が、まるで分を含んだ巨なスポンジのように、私の寿命をじわじわと吸い取っていくような錯覚に囚われていた。