"無償シッター扱いの母" 第4話
「だって、お母さんはいつだってんでたじゃない」
「……どういうことなの、理」
私の声がかすれた。
表を見つめる私の横から、隆が淡々とした、けれどトゲを含んだ声で補した。
「あいつ、転職するんだそうだ。料が今より割くて、キャリアアップになる部署にな。ただし、毎の残業と回の曜勤が必須条件だ」
「転職……?」
「そうだ。婚してで悠斗を育てるために、もっと稼げる会社にくんだとさ。派な志だな。だが、その提条件がこれだ。週の送り迎え、毎晩の飯の支度、週の宿泊、隔週曜のシッター。全部『実・母担当』だ」
隆の指が、テーブルのをトントンとく叩いた。
「これのどこが『助けい』だ? ただの無償の労働シフト表だろうが」
「お父さん、言い過ぎよ!」
理が弾かれたようにちがった。目尻を真っ赤に吊りげ、父親を睨みつける。
「私だって好きで頼ってるわけじゃない! シングルマザーになって悠斗を学までかせようとったら、これくらい働かなきゃやっていけないのよ! 健太さんからの養育費だって、いつ滞るかわからないんだから!」
「なら、それを計画するに、母さんに度でもをげて聞いたか?」
隆のい声が、リビングに鋭く突き刺さった。
「『お母さん、私は婚してこういう働き方をしたい。つきましては、週、あなたのを私の育児に使ってくれませんか』と、ただの度でも相談したか? あらかじめシフトに母さんの名を組み込んでから、事報告で持ってきただけだろうが」
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理の息が詰まった。
ぐっと言葉を詰まらせ、顔を真っ赤にして拳を握りしめる。
その揺が、何よりの答えだった。
聞いていなかったのだ。
娘は、私に尋ねる必すらじていなかった。
私が「断る」という選択肢を、最初から持っていないだと確信していたからだ。
「……理」
私が名を呼ぶと、理はすがるような目で私を見ろした。
だが、そのからびしてきたのは、謝罪ではなかった。
「だって……! お母さんはいつだって、んでたじゃない!」
臓の奥を、細い針でぷすりと刺されたような痛みがった。
「悠斗がまれたも、お母さん言ったじゃない。『何かあったらいつでも頼ってね』『お母さんは暇なんだから、孫の顔が見られるだけで嬉しいのよ』って! 毎週曜のご飯だって、お母さんが作りたいって言ったから来てあげてたのよ!?」
「来てあげてた……?」
私の呟きを遮るように、理はを爆発させた。
「残業のにお迎え頼んでも、お母さん度だって嫌な顔しなかったじゃない!『助かるわ、任せて』って、笑顔で言ってくれたじゃない! 急に何なのよ、お父さんに吹き込まれたの!? 今さらそんなこと言われても、私、もう転職先の内定受託しちゃったのよ!」
リビングが、を打ったように静まり返った。
計の秒針の音だけが、やけにきくカチカチと響く。
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内定を、もう承諾した。
私の返事を聞くに。私の同を得るに。
「……ほらな」
隆が吐き捨てるように呟き、を抱えた。
理の言う通りだった。
私はいつだって「いいわよ」と言ってきた。
忙しそうにする娘の役にちたくて、頼りにされることが嬉しくて、「お母さんは丈夫だから」と笑って引き受けてきた。
娘が私をこう扱ったのではない。
私がかけて、娘に「このは何を頼んでも断らない」という甘えを刷り込んできたのだ。
その事実が、たいのように胸の底へ溜まっていく。
だが、目ので泣きじゃくる娘を見ていると、私のの「母親の防本能」が、惨めさよりも先にをもたげてしまった。
「……もうやめなさい、隆さん」
私は震える声で夫を制した。
「そんな言い方で追い詰めたって、仕方ないでしょう。理だって必なのよ。悠斗をで育てなきゃいけないで、周りが見えなくなってるだけよ」
隆が、信じられないものを見る目で私を見た。
「千恵……お、まだそんなことを言うのか」
「母親なんだから当然でしょう! あの子がの瀬戸際にってるのよ!?」
夫の失望に満ちた線から逃げるように、私は声で言い返した。
そう叫ぶことでしか、自分のに芽え始めた烈な違を、押し殺すことができなかったのだ。