"無償シッター扱いの母" 第2話
玄関のドア越しに響いた「お父さん、もう話した?」
「ちょっと、どいてよ! 悠斗がで待ってるのよ!」
私は夫の腕を力任せに押し戻そうとした。
だが、定まで現仕事を続けていた隆の体はく、びくともしない。
ピンポン、ピンポン。
ドアので、焦ったように呼び鈴が度続けて鳴らされた。
「お母さんー? けてー、ぼく来たよー!」
郵便受けのスリットから、悠斗の無邪気ない声が通り抜けてくる。
胸がチクチクと痛んだ。歳の子どもをこんなたい鉄の扉のにたせて、体何をやっているのか。
「隆さん、いい加減にして! 所迷惑でしょう!?」
「静かにしろ」
隆はい声で私をした。その線は、ドアの覗き穴に向けられたままだ。
から、今度は理の声がした。
「お母さん? いるんでしょ? 鍵、いてないよ」
属製のドアノブがガチャガチャとから回される。
かないことに審を抱いたのか、理の音がドアに歩づいた気配がした。
そして、ほんの数秒の気な静寂の。
郵便受けの隙から、ひどく押し殺された、けれどを疑うほど鮮な理の声が滑り込んできた。
「……お父さん? そこにいるんでしょ」
夫の背が、わずかに張った。
ドアのの娘は、迷うように息を吸い、こう言ったのだ。
「……もう、お母さんに話してくれた?」
が止まった。
玄関ホールの空気が、瞬で絶対零度までえ切ったようだった。
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お父さん、もう、お母さんに話してくれた?
どういうことだ。
何を話すというのだ。
なぜ理は、私がドアのにいるのではなく、父親とで何かを共している提で喋っているのか。
私は掴まれていた首を振りほどき、夫の顔を凝した。
「……隆さん。あの子、何の話をしてるの?」
夫は答えなかった。
唇を噛み締め、線を宙に泳がせている。連れ添ったからこそわかる。これは、追い詰められたの隆の顔だ。
から、もう度理の声が響く。
「お父さん、無しないでよ! 今から荷物のこととか相談するって約束したじゃない!」
「……隆さん。話したって、何を?」
私の声は、自分でも驚くほどく震えていた。
夫は観したように息を吐きし、ぽつりと呟いた。
「……まだだ」
その瞬、私ので何かが弾けた。
父と娘ので、私だけが完全に蚊帳のに置かれていた。
毎週楽しみにシチューを作り、孫の子を磨き、「うちの族は仲が良い」と信じ込んでいた私だけが、何もらされていなかったのだ。
「そこをどきなさい」
私は隆の脇腹に体をかけて押し込み、鍵のサムターンを引に回した。
ガチャリ、とい属音が響く。
「千恵、待て!」
夫の制止を無して、私は扉を力いっぱい押しけた。
のたいが、玄関ホールに吹き込んできた。
目のにっていた理は、私の顔を見た瞬、パッと息を呑んでずさりした。
その顔には、いつもの甘えたような笑顔は微もない。
ひどく青ざめ、目のには黒い隈が濃く浮きていた。
元にいる悠斗だけが、「おばあちゃん!」と無邪気に私のエプロンに抱きついてくる。
「……理。悠斗のを引いて、に入りなさい」
私は娘のトレンチコートの袖を掴んだ。
「とも、リビングに座りなさい。全部、から聞かせてもらうわ」