"都合のいい下請けの妹" 第15話
「無理ならいい、自分で何とかする」
盆が過ぎ、猛暑がり、のが黄くづき始めたのことだった。
あの法事のを境に、実と私の関係は、劇に、そして逆に変化していた。
美羽は、今でも私のにやってくる。
だがそれは、兄から方に送り付けられる荷物としてではない。
毎週曜の放課、美羽が自分の志で「今、っていい?」と連絡を入れ、夕方のだけ私のリビングで宿題をして、私が作った簡単な夕飯をべて帰る。
週に度、曜だけ。
それ以のは、誠と由美さんが自分たちでやり繰りしていた。
の噂で、誠が会社で残業のい営業ラインかられ、定でがれる管理部への異を願いたと聞いた。
当然、役職当は削られ、料は幅にがったはずだ。
由美さんもパートを週に減らし、が交代で美羽の学童の迎えや事の支度をこなしているらしかった。
実の庭には雑がい茂り、父が入れしていた柿のは枝が伸び放題になっていた。
かつてのように完璧にえられた「派な本」の姿は、そこにはもうない。
だが、歪な犠牲のに成りっていた張り子のが崩れ、ようやく等の、みすぼらしくも自した活が始まっていた。
ある曜の夜、私のスマートフォンに誠から珍しくメッセージが届いた。
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『曜の夕方、美羽の学の保護者面談がある。
由美がどうしてもせない仕事で、俺もせない会議が入ってしまった。
曜の午からだけ、面談の代理にってもらえないだろうか』
文面には、かつてのような傲な命令も、「叔母なんだから当然だ」という甘えもなかった。
事務で、どこか怯えを含んだ、丁寧な敬語だった。
かつての私なら、仕事を退してでも引き受けていただろう。
「美羽が学で肩の狭いいをしたらだから」「兄が困っているから」と、自分の予定を犠牲にして。
だが、曜のその、私には以から楽しみにしていた友との観劇の予定が入っていた。
私は指をかした。
い言い訳も、謝罪の言葉も添えなかった。
『曜は先約があるため、対応できません。学に連絡して、程を再調してもらってください』
送信ボタンを押す。
画面を見つめながら、私はかつてのように胃が痛むのをじることはなかった。
断ることは、悪ではない。
自分ののハンドルを、にけ渡さないための、当然の権利だ。
数分、スマートフォンがく震えた。
兄からの返信だった。
『分かった。学に連絡して、別のにずらしてもらう。無理を言って悪かった』
たった文字の返信。
りの話も、嫌の文も送られてこなかった。
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(自分で、何とかするんだ)
画面を伏せながら、私はく息を吐きした。
兄はやっと、を過ぎて初めて、自分ので現実の面を踏みしめ始めている。
に依せず、自分の選択の責任を自分で処理する。
それは痛みを伴う作業だろうが、彼がのになるために、どうしても通過しなければならないだった。
季節はさらにみ、の初旬。
枯らしが吹き抜け、朝晩のえ込みが厳しくなり始めた曜の午だった。
私は自分のアパートの押し入れを理していて、父の古いウールのコートが着、実の階の箪笥に残ったままになっていることをいした。
、父が私の学の入学祝いのに着ていた、仕ての良いヘリンボーンのコート。
それだけは、形見として元に置いておきたかった。
私は誠にいメッセージを送った。
『今、父さんの古いコートを着だけ引き取りにきたいの。頃、寄ってもいい?』
すぐに返信があった。
『ああ、いるよ。気をつけて来い』
私はのマフラーを巻き、初のたいのを歩いて実へと向かった。