"都合のいい下請けの妹" 第13話
「奈津子、どこにあるか教えてくれ」
茂叔父さんの顔が、りで赤黒く染まっていくのが分かった。
「ぶ、部者だと……? 何を寝言を言っとるんだ! 実の父親の盆だろうが! 男をてて支えるのが、嫁にた妹の務めだろうが!」
「その『務め』を果たす権利を、ヶに兄さん自ら剥奪されました」
私は微笑みすら浮かべず、ただ淡々と事実だけをにした。
「『もう度と実に来るな、のことはすべて俺で管理する』と宣言され、鍵も没収されました。ですから本、私は兄から正式に招待されたの会葬者として参列しております。お客様である私に、事の代を命じられるのは筋違いかとじます」
叔父さんが息を詰まらせ、言葉を失った。
親戚たちの線が、私から、にいつくばったままの誠へと斉に向いた。
男が妹をから追いし、そのくせ法事の準備つ満にできず、客ので茶をぶちまけている。
その醜悪な事実の全貌が、居わせた全員のので瞬に繋がったのだ。
「せ、誠……お、奈津子さんに鍵を返せと言ったのか……?」
野の叔母が、信じられないものを見るような声で呟いた。
「病院の送り迎えも、続きも、全部奈津子さんに丸投げしていたおが……父親がんだ途端に追いしたというのかい?」
親戚たちの目に浮かんでいた「妹への苛ち」
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が、瞬に「男への軽蔑」へと反転した。
誠は顔から血の気を失い、喉をヒクヒクと震わせながら、畳に額を擦り付けるようにして呻いた。
「奈津子……頼む、どこにあるか教えてくれ……雑巾は、どこなんだ……」
プライドも、男の威厳も、すべてが剥がれ落ちた、惨めな懇願だった。
私は歩もづかず、線だけを落として告げた。
「台所の流しの、番の黄いバケツのよ」
誠はちがることもできず、膝ちのまま慌てて台所へといしていった。
ガタガタと扉をける音、のが激しく流れる音が、静まり返ったに響く。
由美さんは微だにせず、ただ膝ののハンカチを見つめていた。
午ちょうど。
玄関のインターホンが鳴り、菩提寺の職が到着した。
誠が濡れた雑巾で必に畳を拭き、え切らないペットボトルのお茶を職のに差ししたとき、職は瞬だけ眉をひそめたが、何も言わずに経本をいた。
読経が始まった。
線の煙がくち込める、私は約束通り、父の仏へみた。
持参した菊と仙の鋏をに取り、瓶のを換え、茎のさを切り揃えて際よくけていく。
父が、「奈津子のけるは、いつも背筋が伸びていて気持ちがいい」とんでくれた、その通りの形にえた。
私が今、こので果たすと決めた唯の仕事だった。
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背で、誠が焼台のにみるのが見えた。
炉に落とす抹を持つ指が、激しく震えていた。
何度も咳き込み、親戚の誰とも目をわせられないまま、背を丸めて席に戻っていく。
読経が終わり、職がく法話を述べて引き揚げた、さらなる屈辱が誠を待っていた。
昼のだった。
老舗の仕し料理をドタキャンされた誠が、今朝のに所のスーパーにり、かき集めてきたプラスチック容器の寿司盛りわせとオードブル。
ラップを剥がすと、乾いたマグロと揚げ物が並んでいた。
茂叔父さんは箸を折もつけず、笑を浮かべてちがった。
「親父の盆に、スーパーの惣菜パックとは恐れ入ったよ。条の板も、誠、おの代で完全に終わりだな」
「叔父さん、それは……仕しの配がどうしても――」
「言い訳を聞く気はない! 親父に顔向けできんわ!」
叔父さんはそう吐き捨てると、典袋の控えだけをポケットにねじ込み、産も持たずに玄関へと向かった。
の親戚たちも、居悪そうに互いに顔を見わせ、逃げるように次々とちがった。
「誠さん、お父さんの預の解約続き、めに税理士さんに見てもらいなさいよ。あなたじゃ、また類備で揉めるんじゃないのかい」
野の叔母が放った最の言は、親な助言の形をした、痛烈な信任宣告だった。
正午をし回った頃、あれほど騒がしかった実には、誰もいなくなっていた。
嵐がったのように、散らかったプラスチック容器と、み残されたペットボトルだけが畳のに残されていた。