"都合のいい下請けの妹" 第12話
親戚ので転がった茶器とたい線
約束の午分、きっかり。
私は実の扉のにっていた。
真の陽射しが、喪の黒いウールを容赦なくしていく。
かつては無識にポケットから取りしていた真鍮の鍵はない。
私は背筋を伸ばし、差し指でインターホンを押した。
ピンポーン、とく鳴った数秒、ドタドタとを踏み鳴らす慌ただしい音がづいてきた。
内鍵が乱暴にされ、扉がく。
そこにっていたのは、汗だくの誠だった。
ワイシャツの第ボタンは引きちぎられたようにれ、黒のネクタイは斜めに歪んでいる。
額に張り付いた髪の奥の目は血り、異様なほど息ががっていた。
「……遅いぞ! 何分だとってんだ!」
「分よ。約束通りのです」
私が平然と答えると、兄は忌々しそうに舌打ちし、靴を脱ぎ散らかしたまま玄関の奥へと引き返していった。
がり框を跨ぎ、廊にを踏み入れた瞬、異様な気と穏な声がにび込んできた。
居の方からだ。
「誠! たいお茶の杯もせんのか! 式だと言うからわざわざく来たのに、座布団すらりんとはどういう見だ!」
群馬の茂叔父さんの、気に満ちた声だった。
覗き込むと、畳のにはすでに親戚が揃っていた。
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全員、汗を拭いながら扇子を仰ぎ、嫌そのものの顔で部の隅々を睨みつけている。
叔父たちの元には、コンビニのレジ袋から無造作に取りされたペットボトルの緑茶が、常温のまま転がっていた。
集の法事に、親戚の寄りたちが分く来るなど、田舎では当たりのことだった。
父がきていた頃は、私がには氷でやした麦茶と葛饅を漆の銘々皿に並べ、エアコンを効かせた部に通していた。
だが、今の居はエアコンのフィルターが目詰まりを起こしてぬるいを吐きし、仏壇のの経机には、埃をかぶったままの線てが斜めに置かれていた。
「す、すみません、今すぐお茶を入れ直しますから……!」
誠が、台所から持ってきた古い急須と、バラバラの絵柄の湯呑みを載せた盆を抱えて戻ってきた。
焦りで指先が痙攣していたのだろう。
畳の敷居にを取られ、誠の体が派に泳いだ。
ガシャン、と陶器がぶつかりう甲い音が響いた。
盆から滑り落ちた湯呑みがつ、畳ので派に転がり、濁った湯が茂叔父さんの履いていた袋へと撥ねんだ。
「うわっ! っ! 貴様、何をさらしとるんだ!」
叔父さんがび起き、濡れた袋を払いのけながら誠を鳴りつけた。
誠は蒼になり、濡れた畳のに両をついて「申し訳ありません、申し訳ありません」
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と壊れた械のようにをげ続けた。
その無様な景を、親戚同がたい目で見ろしている。
部の隅に、美羽がさくなって震えていた。
その隣には、今朝くに戻ってきたらしい由美さんが、のような無表で座っていた。伝う様子は微もない。
獄のような沈黙を破ったのは、茂叔父さんの鋭い声だった。
叔父さんの線が、玄関にっていた私を捉えた。
「奈津子! 何をボーッと突っっとるんだ! 兄貴がこんな粗相をしてるのが見えんのか! く台所から雑巾を持ってきて畳を拭かんか! それから、きちんとした茶を淹れ直せ!」
昔と同じ命令調。
「女がいて当たり」「妹が尻拭いをして当たり」という、この族の絶対なルールを振りかざした声だった。
居にいた親戚全員の線が、斉に私へと突き刺さる。
畳にいつくばった誠もまた、救いを求めるように、縋るような目で私を見げていた。
ここで私がエプロンを着けて駆け寄り、膝をついて畳を拭けば、このは丸く収まるだろう。
叔父たちのりは鎮まり、「やっぱり奈津子さんがいないとダメだな」という、障りのいい称賛が戻ってくるだろう。
だが、私は歩もかなかった。
喪のスカートをえ、両をで揃えたまま、私は叔父の目をまっすぐに見据えて言った。
「叔父様、恐れ入ります」
私の声は、騒然としたの隅々まで、驚くほど静かに、はっきりと響き渡った。
「現、このを単独で相続し、施主を務めておりますのは男である誠兄さんです。雑巾の保管所も、お客様へのおもてなしの順も、すべて主である兄が判断すべき事柄でございます。部者である私には、越権為となってしまいますので」
の空気が、瞬で凍りついた。